B5A-1 帰ってきた第5巻

マギ戦記を中断してからはや4年以上が経過。早く再開したいところです。が、またしても誘惑が。
なんと今年になって、あのブラッドソード第5巻がリニューアル、再発売されました!(ただし英語版のみ)
表紙を飾るのはB5-4で登場したアイスベア。廃都スパイトと雪原を背景に、とても幻影だとは思えぬ威圧感を醸し出しています。
しかも本編だけでなく、新呪文、複数のオプションルール、かなりの分量の付録(補遺)が盛り込まれているのです。以下、目玉となる項目を抜粋。
・新呪文:Pillar of Salt(塩の柱)
・オプションルール:機敏度の半分のマス目だけ移動可能、など ←本ブログで導入したオリジナルルールとほぼ同じ
・付録:レジェンド各地の解説、Blood Sword redux(帰ってきたブラッドソード)と名付けられたデイブ氏による回想録
今後の予定としては、
①ソーサリー第4部のリプレイ(1年?)
②上記の追加部分の紹介(1年?)
③マギ戦記の続き(2年?)
といった感じでしょうか。
ところで、今年になってウェブリブログが大幅なリニューアルを行った結果、記事ごとのデザインの変更ができなくなってしまいました。テーマ別記事の並びも昇順にできないようですし。タダで使わせてもらっているので文句を言う筋合いではないですが、ちょっと残念。
それでは、また。I'll be back!✊

CM2-2 夢の中で(In Dreams)

【ゲームブックでの該当場面】
・灰色のレディ&鎧の化け物との戦闘
・その後の塔内の探索

【ゲームブックと異なる設定】
・老騎士ヴァラダックスの兄の花嫁としてセレシャ(Seresha)が登場
・灰色のレディはセレシャの姿をコピーしていた。また、灰色のレディがワーロック王の手下である可能性が指摘された(真相は不明)。
・セレシャはワイアード出身の預言者で、かの地にブラッドソードの手がかりがあることを二人に教えた。
・塔内の探索では、デーモンや罠や魔法の球は登場せず。

【戦闘シーン】
鎧の化け物どもが迫ってきた。対面の相手が生者ではなく古代の甲冑に憑りついた亡霊であると悟り、アルターは戦慄した。カエレスティスは低い突きから跳びのくと、続けざまに薙ぎ払われた槍を頭を下げてかわした。だが、いつまでもかわし続けることなどできそうにはなかった。一方、アルターは喉元を狙った突きを剣で受け流した。少なくとも彼には魔法の銀の剣で防御するという選択肢があったが、彼にしても疲れ知らずというわけではない。二人は徐々に壁際へと追い詰められた。
C「こいつらを成仏させられないのか?」
A「我々は修道騎士団、除霊は専門外だ。」
C「修道士が祈祷よりも剣の方が得意とは、一体世の中はどうなってるんだ?」
アルターは相手の虚ろな面頬に剣を突き刺した。そいつは苦痛の叫びをあげたが、ただそれだけだった。超自然的な力で、アルターの心臓めがけて反撃の一撃を繰り出してきたのだ。面頬への突きでバランスを崩していた彼には、致命的な一撃をかわすチャンスはなかった。だが次の瞬間、彼は強く押されて床に転がり、逸れた槍は壁に当たって火花を散らした。カエレスティスが宙返りをして、アルターを足で蹴ったのだ。鎧の化け物はなおも槍を突き立てようとしてきたが、彼は剣を一閃して槍の木製の柄を切り落とした。バランスを崩して倒れそうになった化け物に押しつぶされるのではないかと一瞬危ぶんだが、そいつは奇跡的に直立し続けた。
だが、もう一体がのしのしと向かってくる。
A「もし何か作戦を思いついたなら、今が実行する時だぞ。」
アルターの掛け声に、カエレスティスは一か八かで剣を灰色のレディの頭めがけて投げつけた。だが動けないとはいえ、魔女はうなりをあげて飛んでくる剣の軌道を目で追っていた。魔法のエネルギーが脈動すると、鼻をつく臭いを残して、剣は見えざる盾で弾き飛ばされた。二体目の化け物は、既にカエレスティスの傍まで迫っていた。武器のない彼には受け流すすべはなく、身をかわすには遅過ぎた。
だが、彼の賭けは無駄ではなかった。投げられた剣を弾くために魔法を使う間、灰色のレディはヴァラダックス卿の存在を忘れていた。束縛を維持する精神集中が途切れたため、彼を縛っていた石の触手が緩んだ。老騎士はこの機を逃さなかった。別の魔法の盾を作り出す間もなく、彼の剣は魔女の首をはねた。邪悪なしかめ面のまま、首は敷石の上に転がり落ちた。同時に、鎧の化け物の内側から低いうなり声がして、壊れた操り人形のように前のめりに倒れた。
C「何とか間に合ったな。」
A「剣を投げるのが最善の策だったのか?ファルタインか何かを呼び出せなかったのか?」
C「もちろん無理だったさ。そんなことをしたら、奴らが俺達を串刺しにしている間にファルタインと交渉するはめになってたぜ。言い争いは終わりだ。俺達は生きている、そうだろ?」

【塔の探索シーン】
ヴァラダックス卿は、盾の紋章が彫られた象牙の飾り板を部屋の奥で見つけた。兄の持ち物だったというそれを手に取ろうとした時、カチッと音がして狭い下り階段が床に現れた。ヴァラダックス卿は震えながらつぶやいた。
V「そんな事があり得るだろうか?今までこれだけの年月が過ぎているというのに…。」
彼が秘密の通路を下っていったため、二人も渋々後に続いた。途中、通路が狭くなっている箇所で、肩幅の広いアルターは身動きが取れなくなったため、カエレスティスが後ろから蹴りを加えて押し出すという一幕もあった。
階段の終わりにはオーク材の扉があった。凍てつく水に飛び込む人のように深く息を吸い込むと、ヴァラダックス卿は鉄のハンドルを回して扉を開けた。部屋の中には石の棺があり、中には蝋人形のように肌の白い、ブロンドの髪の女性が横たわっていた。
C「灰色のレディだ!」
V「いや、あの姿は魔女が盗んだものじゃ。この女性は我が兄の花嫁のセレシャ、数十年前の結婚式の夜、魔女に呪いをかけられたのじゃ。」
ヴァラダックス卿が嘆き悲しんでいると、驚いたことにセレシャの唇が動き出し、鼓動も再び感じられるようになった。助け起こすと呼吸が滑らかになり、青白い頬にも色味がさしてきた。そして、小鳥の羽ばたきのようにまぶたが開くと、サファイアのような青い瞳があらわになった。灰色のレディは恐ろしげな雰囲気だったが、その同じ姿をセレシャの純潔さは美しさへと変えていた。
若者二人を見た彼女はきょとんとしていたが、老騎士に視線を移すと驚きで目をみはった。
S「まさか…。」
口ごもる彼女に、彼は涙を流しながらうなずいた。
V「そう、わしじゃ、ヴァラダックスじゃよ。」
彼女は手を伸ばして、彼の年老いてしわの寄った顔に触れた。
S「私は、あなたが私を起こしに来てくれるという夢をみました。あなたと他の二人が折れた剣を帯びて。でも何が起きたの?あなたはとても年老いてるわ。」
V「30年もの歳月が過ぎてしまった。わしはつい最近になって探索の旅から戻ってな、それから魔女の犯した悪事を発見したのじゃ。もう決してどこにも行かぬ。そなたに起きた全てのことに責任を取ろう。」
S「いいえ、それはあなたの落ち度ではないわ。それで…、私の夫はどうなったの?」
V「死んだよ。」
S「かわいそうなジョダックス…。ところで、あなたのご友人方を忘れてたわ。」
C「あなたにお仕えできて光栄の至りです。危険など我らには何の意味も持ちません。賞賛は結構です。正義こそ我々のモットーです。」
彼女は悲しげに微笑んだ。
S「私のみた夢ではあなたは違っていましたよ。そんなに若くもなければ、そんなに楽しい人でもありませんでした。邪悪な星達が旅の中であなたを変えてしまったのですね。」
カエレスティスは肩をすくめただけだったが、アルターはもっとまじめに受け取った。
A「夢の中にはしばしば真実があるものです。」
V「セレシャの場合はそれ以上の意味があるぞ。彼女はかつてワイアードの預言者じゃったからな。」

【別れ際】
彼らは塔を出て、草の茂った斜面に立った。ヴァラダックスはセレシャの肩に腕を回し、自分のマントを掛けてやった。
S「私は遥か北方のワイアード王国で生まれました。その島はワーロック王によって統治されています。」
A「彼の事は聞いたことがあるが、それは子供を怖がらせるおとぎ話だと思っていた。」
S「彼は実在の人物です。そして、彼を怖がるのは子供だけではありません。彼は夢の中に入り込むパワーを持ち、自分に逆らう者には酷い悪夢をみせるのです。時として、人は目を醒ましません。」
彼女は長い間眠り続けた背後の塔を振り返らずにはいられなかった。
A「灰色のレディは彼が送り込んだのですか?」
S「分かりません。彼は自分の王国の外には力を及ぼせないはずです。それが、私が海を越えてここに逃げてきた理由なのです。灰色のレディは彼のエージェントかもしれませんし、そうではないかもしれません。今となってはもう知りえないことです。」
C「ヴァラダックス卿はあなたを預言者だと言ったが、それはつまり、あなたの夢に隠された意味があるってことですか?」
S「それはあなた方が私に話してくださらないと。折れた剣が何を意味するのか―、ええ、私はそれを夢でみたのです。私の夢では、あなたがた二人はワイアードに運命づけられていました。」
C「ワイアードだって?北へ?厳冬の?何てみじめな行く末だ。何かの間違いじゃないのですか?」
アルターは笑いながら相棒の背中をどんと叩いた。
A「お前はいつも貰い物のあらを探してばかりだな!この手がかりが天からの贈り物だとは考えられないのか?我々は生命の剣の次の部分を見つけなければならないんだ。レディ・セレシャの夢によると、それはワイアードで見つかるのだろう。」
S「注意してお行きなさい。ワイアード王国に入ってしまえば、あなた方はワーロック王のパワーの支配下となります。あなた方が来たことに気づけば、彼は夢の中であなた方を殺そうとするでしょう。」

【感想】
戦闘シーンやセレシャとのやり取りは、箇条書きにすると雰囲気がかなり損なわれてしまうので、大まかに訳してみました。というわけで、この「マギ戦記」では、ワイアード島にブラッドソードのパーツがあることを教えてくれたのは、瀕死の吟遊詩人ではなく今回登場したセレシャでした。ヴァラダックス卿は誇り高い騎士なので、彼女の救出に丸々30年費やしたとは言わずに、最近ここに戻ったばかりだと強がっていましたが(笑)。
それにしても、結婚式の夜に呪いをかけられ、蘇っても結局夫とは再会できなかったとは、大魔法使いエンタシウスとその許嫁コーデリアのように切ない物語です…。

CM2-1 騎士の探求(The Knight's Quest)

【あらすじ】
2、3週間前にカルーゲンの砦を後にしたアルターとカエレスティスは、とある宿屋で一人の老騎士と出会った。彼-ルションの騎士ヴァラダックス-に助力を申し出たアルターは、相棒に呆れられつつも、敵討ちを引き受けたのだった。三人は灰色のレディと呼ばれる魔女が住む塔へと赴いた。魔女は引き返すよう脅してきたが、会話の最中に朝日を浴びて石へと変わった。これを好機と、ヴァラダックスは魔女に斬りつけようと近づいたが、彼女は魔法の触手で彼を縛り付けてしまった。さらなる脅しをアルターがはねつけると、魔女は二体の鎧の化け物を二人に差し向けてきた。

【ゲームブックでの該当場面】
・第二巻のミスドラックス村と灰色のレディの塔が舞台
・老騎士に助力を申し出る→丘を幾つか越えた所にある魔女の塔へ行く→朝日を浴びて魔女が動けなくなる→撤退を拒否すると鎧の化け物が襲ってくる

【ゲームブックと異なる設定】
・現在の所持金は二人合わせて銀貨20枚のみ。一方ゲームブックでは、第一巻をクリアしていれば、第二巻開始時に各人の持ち越し金額に金貨60枚が加えられる。
・行商人や宿屋の主人は登場せず、宿屋の名前も不明。
・ゲームブックでは老騎士と出会うのはミスドラックス村(Misdraex)だが、今回は不明。なお、この先の第三章にミスドレン(Misdren)という村が出てくるが、今いる場所より少し先(海寄り)。
・老騎士の名前がヴァラダクソール(Varadaxor)からヴァラダックス(Varadax)へと変更されている。
・老騎士の兄弟の数は、ゲームブックでは3人だったが、今回は兄が1人。灰色のレディの罠に落ちて既に死亡している点は同じ。

【会話その1】
カエレスティス(C)「俺は今自分が耳にしていることが信じられないぜ!お前は一体全体何を考えているんだ?」
アルター(A)「(炉辺でスープを飲んでいる老騎士を振り返りながら)声を小さくしろ。彼に聞こえてしまう。」
C「俺は数分間外に出ていただけだった。それが戻ってみると、お前はばかげた冒険に行くと誓っていたんだ。お前は修道士であって、タモールの宮廷騎士じゃないってことを忘れたのか?」
A「お前も知っての通り、私は騎士修道会に所属していて、全ての騎士に義務付けられている騎士道精神と同じ誓いを我らも負うことになっている。あの老紳士が重大な問題を抱えていたから-。」
C「確かにな。だが、彼のためにそれを解決することがなぜ俺達の義務になる?」
A「彼が助力を求めてこなかったからだ。彼は真の騎士で誇り高い人だ。だから、名誉ある唯一の行動は、彼に助けを申し出ることなんだ。」
C「それが騎士道精神なのか?助けを求めてこなかったという理由で人々を助けることが?俺はお前が名誉と愚かさを混同しているような気がするぜ、アルター!」
<カエレスティスの声が大きくなり、それを無視できなくなった老騎士は二人のテーブルまでやって来た。>
ヴァラダックス(V)「(カエレスティスに対して)わしはお前さんが何を考えているか分かるぞ。確かにわしは貧しく無力な老人じゃ。だがかつてはわしも若く、お前さんのように壮健だった。今でこそ年老いて弱っているが、若かりし頃は脚は真っ直ぐで、腰は今のゼイゼイいう胸と同じくらい引き締まり、胸板は今の太鼓腹と同じくらい厚かった。年月という容赦のない敵は、ルションの騎士ヴァラダックスを思いやってはくれなんだ。」
C「名文句だな。そして、これは俺達全員への教訓なんだ。『年長者へは礼儀正しくせよ。いつの日か人は年老いるのだから。』それでも俺は-。」
V「黙らっしゃい。わしは炉辺で身体を丸めて座り、敵に復讐できぬ老いた身を呪いながら、生涯の終わりの時を待つしかない。だが死んでも死に切れんのは、あの邪悪な灰色のレディが恐ろしい罪を犯しながら、いつまでも生き延びていることじゃ!」
A「ヴァラダックス卿は既に、灰色のレディがどのようにして彼の兄を死に至らしめたのかを私に語ってくれた。その女は魔女なんだ、カエレスティス。」
V「魔女?いや、あの女は人間の皮をかぶった悪魔じゃ。この世の者とは思えぬ美しさと教養を身につけながら、心の中には悪魔が住んでおる。わしの兄だけが彼女の犠牲者というわけでは決してないぞ。何年にもわたって罪のない多くの男達に死をもたらしているのじゃ。」
C「その女の意見を聴かないことには、一方的に有罪だと決めつけるのはちょっとばかり乱暴じゃないか。」
A「宿屋の主人と話をしたよ。ヴァラダックス卿の話は間違いないとのことだ。灰色の魔女は、その悪行と悪魔的な魔術でこの辺りではよく知られているらしい。不運なことに、ここクラースではそのような振る舞いはごく普通の事なんだ。」
V「農民や旅人、わしら兄弟のようなよそ者が犠牲者である限り、あの女は好きなようにできるのじゃ。未だ罰を受けていない犯罪の全てを思うと、はらわたが煮えくり返るわい!」
C(話がどんどん進んでいくことを不愉快に思いつつ)「老騎士殿、俺達がしてやれる唯一の助言は、この古い格言だ。『最良の復讐は、より良く生きること。』さて、俺と友人はそろそろ行かないと-。」
A(目に冒険の炎を宿らせて)「我らの義務は明らかです。翌日の夕暮れ前までには、奴は悪事の償いをすることになるでしょう。全能の神と全天使に誓って!」
V「よくぞ言ってくれた、若者よ。」
C「…。」

【会話その2】
V「恐ろしき乙女、心を持たぬ怪物よ。お前を世界から取り除くためにわしらは来たのじゃ。」
灰色の魔女(L)「勇敢な台詞だこと。でも、私の目には老いぼれが一人と、軟弱な若造が二人見えるきりだけど。もし私が震えて見えたとしたら、それは恐れのためではないわ。」
C「お嬢さん、この老紳士が私達に語ったことの半分でも事実だとしたら、それは実に深刻なことです。ですが、遠回しな脅しをしたところで何になりましょう。ましてや、野蛮な武力を振るったり魔術で大気を汚すなどもってのほかです。」
L「お前は漬物にする価値のある舌を持っているようね。それにふさわしい瓶を用意してあげるわ。」
<ここで、魔女の口調が突然変わったことに気づいたヴァラダックス卿が剣を手にして前に踏み出したものの、魔女が一言発した途端に後ろへ跳ね飛ばされてしまった。それでも老騎士は再びゆっくりと立ち上がった。>
L(少し驚きながら)「私の『見えざる槍』の呪文を受けて立ち上がれる者はめったにいないのだけどね。」
V「魔女よ、わしは30年間の憎悪に駆り立てられているのだ。お前がどんな呪文を唱えようと、わしの復讐から逃れられはせんぞ。」
A(カエレスティスとともにヴァラダックスの隣に進み出て)「レディ、私は見習い僧に過ぎないが、罪の告白を聴く権限を与えられている。今は神と和解するがよい。我ら三人は今日お前を地獄の主人の元へ送り返してやると誓ったのだからな。」
C「実のところ、俺は誓ったわけじゃなく、世間一般の心証に同意するよう無理強いされているんだがな。」
L「修道士、ごろつき、そして老いぼれ。お前達を塵の中のつば以上だと私がみなすとでも思っているの?私には他の魔法もあれば、従者もいるわ。そしてもっと-。」
<その時、朝日が昇り、最初のピンク色の曙光が部屋に差し込んだ。日光が触れた途端、魔女は静かになり、石のように硬直して動かなくなった。>
V「朝日を浴びて凍りついたのじゃ!今この機を捉えて魔女を殺さねば。」
<剣を掲げて近づくヴァラダックス。しかし、魔女の冷たく白い目がギラリと光ると、老騎士は床石から生えてきた触手に全身をからめ捕られてしまう。触手は彼の首を絞めつけ始めた。助太刀に飛び出したアルターの足元からも触手が湧き出してきたが、カエレスティスの警告でとっさにかわす。やがて、彼らの頭の中に魔女の声が聞えてきた。まるで、一人で寝ている時にベッドの下から声が聞こえてくるような不気味な感覚だ。>
L「簡単に勝てると思うのかい?すぐにここを立ち去るなら、お前達は生かしておいてやろう。もし断るなら、地獄の全軍団を差し向けるよ。」
C「三人とも見逃してくれるのか?」
L「いいや、お前達青二才だけさ。この老いぼれは、かつて私をたびたび悩ませてきた。こやつにはこれまで私のえじきとなった者達の亡骸の中に留まってもらう。」
A「逃げたりするものか。」
L「勝手におし!」
<魔女が怒りで両目を光らせると、彼女の背後の壁際に立っていた二体の甲冑が動き出し、槍を両手で持ち上げてガチャンガチャンと向かってきた。>

【感想】
マギ戦記の第二巻から不定期更新を再開~。ブラッドソード的な会話があると文が長い長い。
イコンの魔法(CM1-14)に引き続き、またも触手が出てきます。作者は触手スキー?そういえば、ゲームブック第二、三、五巻でも触手が出てきました。
ちなみにタモールは新セレンチーヌ帝国の首都です。

CM1-15 始まりの終わり(The End of Beginning)

【あらすじ】
左手にブラッドソードの柄頭の宝石を、右手にランタンをそれぞれ握り締め、アルターはカエレスティスに案内されて、当初の目的だったジャイラスの所に向かっていた。アルターはカエレスティスに道順だけ教えてくれればいいと言ったものの、彼はどうしても同行すると言い張った。
濃灰色の空から粉雪が舞い降りてきた。広場には人っ子一人おらず、街灯は灯されていない。カルーゲンの兵士達は混乱状態にあった。主が死んだため、彼らは街のパトロールよりも宮殿の略奪の方に関心があったのだ。分別のある市民は、かんぬきを下ろして自分達の家の中に閉じこもっていた。アルターとカエレスティスは建物の物陰に入り、身を切るように冷たい風を避けた。
再び歩を進めようとした時、カエレスティスはアルターを呼び止め、竪琴弾きの言葉を正確に思い出すよう言ってきた。アルターはほんの数週間前の出来事を-その間に彼は若造から一人前の男になったのだ-思い出した。カエレスティスとの会話を通して、アルターは竪琴弾きの真意を悟った。五侯の復活を食い止めるために生命の剣を修復させることこそ、彼が託された使命だったのだ。
だが、それを引き受ける決断をできないまま、彼はジャイラスに会おうと通りを先に進んだ。やがて通りは丸石で舗装された小さい広場で終わり、その中央には水汲みポンプがあった。そのポンプと、突き当りの石壁に刻まれた『ジャイラス』の銘のいわれをカエレスティスから聞くうちに、アルターはついにこの探索を引き受ける決断をしたのだった。
憂うつな夜空の下、クラースのさびれた通りに立ち尽くした二人の若者は、運命の重さをひしひしと感じていた…。

【ゲームブックでの該当場面】
・なし

【ゲームブックと異なる設定】
・ジャイラスの気高い行為に感化され、アルターがブラッドソードを修復する探索を引き受けることを決意する。

【アルターvs.カエレスティス その1】
カエレスティス(C)「目的地はちょうどこの先だ。だが待ってくれ。最初に説明しなくちゃいけないことがあるんだ…。(物思わしげに唇を噛みながら)その宝石をくれた竪琴弾きの老人は、それをジャイラスに渡せとお前に言ったんだよな。」
アルター(A)「(いらいらしながら)そのことはもう話しただろう。」
C「ああ、分かってる。だがよく思い起こすんだ。彼は正確には何と言った?」
A「彼は、この宝石は剣の一部だと-、私に剣の他の部分とともに修復するよう言った…。剣は5つの部分から成り-、いや違う、そうじゃない。5人の敵がいると-。」
C「5人の敵だって?」
A「ああ。それが何か意味するのか?」
C「クラースの空を流星が夜ごと横切るのは知っているだろう?人々はそれを五侯と呼ぶ。あの星々は不吉の前兆なんだ。真のマグスの五人の亡霊だという説もある。」
A「(うなずきながら)あの竪琴弾きが私に伝えようとしたことは確かにそれだ。マグス・ジンがスクリミールに対してしようとしたように、五侯は自らを復活させようとしているのだ。彼は私が剣の部品を集めて奴らを食い止めることを望んだのか…。」
C「ジャイラスについてはどうなんだ?」
A「私がその探索を引き受けられないのなら、柄頭の宝石をジャイラスに届けるよう彼は言ったんだ。『その時君は知るだろう。』というのが彼の最後の言葉だった。何を知るというのだろう?」
C「なぜその探索を引き受けられないんだ?」
A「どうすれば私にできるというのだ?私の使命は修道院に戻ることだ。」
C「だがお前は地下競技に参加して宝石を取り戻した。それだって探索だろう?」
A「私は約束したことをやっているに過ぎない。これをジャイラスに渡せば、私の使命は終わりだ。」
C「完全に確信があるという風には聞こえないがな。」

【アルターvs.カエレスティス その2】
<議論を切り上げて物陰から通りへと駆け出したアルターをカエレスティスが追いかける。>
C「ショックに対する準備はできたようだな。」
A「(広場の行き止まりにたどり着いて)ここにジャイラスが住んでいるのか?」
<行き止まりの壁の上の方に『ジャイラス』と刻まれており、その下には青銅の板が貼られている。板は鏡のようにアルターの顔を映した。>
C「ジャイラスはこの泉の名前だ。それは、随分前にこの砦にやって来た放浪の僧侶の名前でもあるんだ。彼はマグス・カルーゲンの宮廷に取り立てられたかったようだが、この地での残酷な行為や不正に目をつぶることができないと気づいたんだ。彼はカルーゲンに説教したんだが、その結果彼は逮捕され、処刑されてしまった。翌日、彼が処刑された通りの角に新鮮な水を吹き出す泉が現れた。俺達が立っているまさにこの場所だ。カルーゲンはこういう聖なる魔法をとても恐れていたから、何も手出しできなかった。それからポンプが作られ、人々は欲しい時はいつでもきれいな水を手に入れられるようになったというわけさ。」
A「青銅の鏡もその時に?」
C「誰がそれを置いたのかは知らないぜ。さて、俺はここで水を飲めるし、お前は鏡で自分自身をはっきりと見れるというわけだ。だが、その意味するところは、誰にも分かりはしないのさ。」
A「俺は分かったような気がする。(夜空を仰ぎ見ながら)古代マグスの亡霊よ、この誓いをよく聞け。私はこの宝石を委ねられた。生命の剣の他の部分も見つけてやる。だから、このただの警告にも存分に注意を払うがいい。そのまま死者の中に留まれ。世界に再び降り立ち、お前達の古代の悪行で汚そうなどとしてはならぬ。もしも再び生者の世界に降り立とうとするならば、エルスランドのアルターがお前達を待ち受けているからな。お前達は勝てないぞ!」

【感想】
このシーン。さびれた夜の街角で吼えるのは、はたから見れば立派な変質者。英雄誕生の瞬間なんだから、もうちょっと何とかならんかったの?
一方、消極的な姿勢で探索を始める形となったゲームブック第二巻については、最近少し思い直して、あれはあれでアリだったかもと感じています。冒険者の全員が、最初から使命感に燃える方が逆に不自然ですし。もっともその場合は、だんだんとやる気になる描写も欲しいところです(ワイアード王国のウルバとの会話で少し描かれてますが)。
何はともあれ、これで「マギ戦記」の第一巻が終了しました。いろいろ忙しかったので、分量はさほどでもないのに、ほぼ1年掛かってしまいました。続きもボチボチやっていきます…。

CM1-14 マグスの没落(The Magi's Downfall)

【あらすじ】
その頭蓋骨は自らをかつての巨人スクリミールだと名乗った。そして、マグス・ジンと同様、散らばった骨を集めて復活させることを求めてきた。アルターとカエレスティスはその要求を無視しようとしたが、イコンはどうしても骨を集めようとした。頂上へと続く傾斜路を進んでいくと、他の部位の骨も次々と見つかった。頭蓋骨と胸郭で手一杯となったイコンは、骨盤と脚の骨や肩甲骨と腕の骨については、他の二人に助力を懇願してきた。二人はイコンやジンに不信感を感じていたため乗り気ではなかったが、最終的にはそれらの骨を持ち運んでやった。
頂上に着くと、そこには勝利の紋章が翻っていた。二人は改めて、骨は捨て置いてさっさと勝利の紋章を手にして地上に向かうべきだとイコンに対して主張した。イコンは顔を背けて数秒間思いを巡らせていたが、結局二人の意見に同意した。だが、奴が機先を制して母国語の呪文を唱えた途端、アルターの腕の傷が再び開き、激しい痛みとともに彼は地面にうずくまってしまった。カエレスティスは剣を抜いてイコンと対峙したが、同じく抜刀した奴から距離を取った隙に、奴の魔法で生まれた蔓によって足をからめ捕られて動けなくなった。
身動きできない二人を尻目に、イコンは骨を組み立てながら自分の野望を語った。復活させた巨人スクリミールによってクラースを支配し、この地に眠っている真のマグス達の古代図書を手に入れることで、この世の何者よりも偉大な魔術師になるのだ、と。
骨の組み立てがほぼ終わった頃、アルターは剣を手になんとか立ち上がろうとしていた。その動きを目の端で捉えたイコンがそちらを向こうとした時、奴の背後で声がした。「イコンよ、マグス・ジンだ。」
イコンは周囲を見渡したが、そこには誰もいなかった。奴がカエレスティスの腹話術に騙されたと気づいた時にはもう手遅れだった。奴は手のひらに火球を呼び起こしたが、それをアルターに向かって放つ前に、彼が捨て身で投げた魔法の銀の剣が胸板を貫いた。
捨て台詞を二・三残すと、イコンは赤い霧へと姿を変えて姿を消した。と同時に、二人を襲っていた魔法も解けた。復活しつつあるスクリミールを止めようと、カエレスティスは魔法の指輪でファルタインを呼び出した。だが、強大なマグス・ジンやスクリミールとの争いに巻き込まれまいと必死になった奴は、以前対価として受け取ったブラッドソードの柄頭の宝石を彼に返すと、あっという間に姿を消した。そこで、彼は最後に残されたドラゴンロードの宝石を巨人の口の中に放り込んだ。
やがて復活した巨人は、雷鳴のような雄叫びをあげると、頂上に立って転送の魔法で地上へと向かった。脇にどけられた勝利の紋章を拾い上げた二人が後を追うと、転送先のマグスの大広間には踏みつぶされた人々の無残な姿があった。その中には数人のマグスも含まれていた。二人は出口目指して駆け出したが、目ざといスクリミールに見つかってしまった。恩知らずの巨人は二人を殺そうとしたが、その時異変が起きた。口から熱い空気を吹き出すと、奴は苦痛に満ちた表情でどうと倒れた。氷の巨人は、魔法の宝石から出た熱と炎の力の前に屈したのだ。奴の身体は炎に包まれ、後には骨も残らなかった。

【ゲームブックでの該当場面】
・スクリミールの骨を拾う→イコンと対決&撃退→頂上で組み立ててスクリミールが復活→地上に移動したスクリミールが大広間で大暴れ→アイテムを使って奴を倒す
・回復魔法を使うと見せかけてイコンが不意打ちしてくる
・スクリミールは鉄の籠手(ゲームブックでは「Doomgrip」という名がついている)をはめている
・スクリミールによって、カルーゲン、ウル、ベンゾールが死亡。

【ゲームブックと異なる設定】
・イコンがスクリミールの骨を運んで組み立てた
・イコンの真の動機が語られる
・勝利の紋章の丘でイコンと戦闘。その際、幾つかの魔法を使用するが(苦痛を与えて行動を制限、触媒を用いて生み出した蔓で相手を縛る、火球、霧に姿を変える)、報復の炎は使用しなかった。
・スクリミールはドラゴンロードの宝石で倒された(ゲームブックではカリウムの破片)

【アルター&カエレスティスvs.イコン その1】
<スクリミールの頭蓋骨は、自分の骨を集めて組み立てるよう三人に呼びかけると、再び沈黙した。>
カエレスティス(C)「こいつはそこに転がしといて、さっさと先に進もうぜ。」
イコン(I)「(首を振りながら)地下競技場を立ち去ることは許されていない。マグス・ジンは俺達を魔法で呼び戻して、地獄送りにしてしまうだろう。友よ、二心を抱くには遅すぎる。良かれ悪しかれ、ジンによってサイは投げられたのだ。」
アルター(A)「もしそうなら、おそらく不運という目が出るだろうな。」
<先に進むと巨人の骨が新たに見つかり、イコンは一人では骨を持ちきれなくなった。>
I「手伝ってくれ。一人では全部を運べない。」
A「私はそれにかかわりたくない。」
C「俺もだ。」
I「お前達が恐れていることを非難するつもりはない。お前達はまだ若く、この地下競技場に入って以来、最も勇敢な男でさえ恐怖するような体験を十分してきたのだ。だが、もう少しだけ固い意志を持ち、勇気を保つのだ。」
A「こちらがためらうのは恐怖からじゃない。これが正しい行動なのかという理にかなった疑念からだ。」
C「恐怖もちょっぴり入ってはいるがな。」
I「何度言わねばならんのだ?もし俺達がジンの要求をしくじれば、彼は俺達をここで永遠に朽ちさせてしまうのだぞ。俺達は盟友だ。だからもう一度頼む、手伝ってくれ。」
A「お前はどらを叩いて我々をこの事態に巻き込む前に相談すべきだったのだ。」
<そういいつつも、アルターは重い脚の骨を背中に担ぎ上げた。そして、次に見つかった腕の骨と籠手はカエレスティスが運んだ。>

【アルター&カエレスティスvs.イコン その2】
<山頂についた三人>
I「これが巨人の骨を組み立てる枠組みだ。」
A「今こそ、その計画を止める時だと思うのだが。」
I「まだ説明しなければならないとは信じられない!もしジンの命令をしくじればひどい目に遭うのだぞ。だが、命令通り巨人を復活させれば、俺達はマグスが与えてくれるよりも大きな報酬を得られるのだ。」
A「彼は約束を守るようなタイプの人物ではないと思う。」
C「ともかく、奴の脅しは忘れろよ。俺達が勝利の紋章に触れた瞬間、俺達は安全に転送されるだろうさ。もし奴に闘技場を越える力があるのなら、奴があの場所で俺達の助けを必要とするはずはないからな。」
I「(顔を背けて少し考えた後で)友よ、疑いようもなくお前達が正しい。俺の執拗な言行については忘れてくれ。紋章を手に取り、地上へ帰還しよう。そして、カルーゲンの砦で一番の酒場で熱狂的な夜を過ごそう。だが、アルター、最初にお前の傷を見せてくれ。俺にはささやかな呪文が残っているから、俺達の勝利の宴にお前が元気に臨めるよう、俺が癒してやろう。」
<カエレスティスが警告の叫び声をあげるよりも早く、イコンが母国語で二言三言呪文を唱えると、包帯の下の傷が開いてアルターは地面に倒れ込んだ。>
C「(剣を抜いて)驚かせやがって。」
I「それは残念だ。少なくともお前はこの裏切りを予期していたと思ったのだがな。」
C「ああ、もう間もなくだろうと思っていたさ。」
<イコンはマントのひだから剣を抜刀し、カエレスティスの顔目がけて斬りつけたが、彼はそれを剣で受け流した。>
I「お前の仲間の回復が、お前を助けるのに間に合うとは思えんがな。」
C「それなら、俺は剣術の腕前を披露してやるぜ。」
<イコンを山頂の崖に追い詰めようとするカエレスティス。一方、イコンはローブから紫色の液体が入ったガラス瓶を取り出すと、それを彼の足元に投げつけた。すると濃い蒸気が立ち上り、彼は毒かもしれない気体から顔をかばった。>
I「フハハ、俺はそんな露骨な真似はしないぞ!」
<カエレスティスの両足は、岩から生えた紫色の触手にからめ捕られてしまっていた。彼がバランスを崩して剣を取り落とすと、イコンは剣を彼の手の届かない場所へと蹴り飛ばした。>
I「お前は上手くやったが、これで終わりだ。俺が勝ったのだ。」
A「(自分の血の海の中、苦痛で半ば気が遠くなりながら)お前はこの一連の事を勝利の紋章のためにやったのではないな?マグス・ジンの幽霊のためですらないんだな?お前が最初から求めていたのは、スクリミールの骸骨だったのだ。」
I「(うなずきながら)マグス・ジンのパワーが地下競技場の外に及ばないというカエレスティスの発言は正しい。俺は巨人を復活させ、クラースの君主になるために奴を利用するつもりなのさ。それから俺は、現在の成り上がりどもが無視して朽ちてゆくに任せている真のマグスの古代図書を手に入れるのだ。ジンよりも、他の何者よりも偉大な、史上最強の魔術師となるために。

【カエレスティス&アルターvs.スクリミール】
<カルーゲンの砦内で大暴れする巨人スクリミールと対峙した二人>
スクリミール(S)「スクリミールは人間の手によって墓場から呼び戻された…。これはふさわしいことか?誇り高いヨタンハイムの王が、こんな屈辱を耐え忍ばなければならんのか?いや、断じて許せん!貴様ら二人はここで死んで、死の女王へ俺からの伝言を持っていくのだ。彼女の王国の版図を広げるに十分な魂を送るため、俺の今後は費やされるだろうとな!」
C「お前は氷の巨人だよな、そうじゃないか?」
S「俺の故郷は、厳しい風と尖った氷の峰の-。」
C「(アルターに向かって)よしよし。奴は氷の巨人だ、申し分ない。」
A「(カエレスティスに同調して)奴は巨人20人分くらいしゃべるが、話の中身は安っぽいな。」
S「古き神の血のもとに!その横柄さが、お前達の死を苦痛に満ちたものにするだろう!」
C「お前は熱気で満ちているぞ、スクリミール。」
<ここで、口から噴き出る蒸気に困惑する巨人。>
A「どうかしたのか、巨人よ?」
C「俺が思うに、何か食べたのだろうさ。」
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【感想】
仮にイコンが真のマグスの古代図書を手に入れても、それはあくまでも彼らが人間界で身に着けた知識に過ぎないので、天界から帰還した五侯には敵わないと思います。イコン君、残念!

CM1-13 神を恐れぬイコン(Icon the Ungodly)

【あらすじ】
洞窟内の白い霧に覆われた平原を歩いていた二人は、石柱を見かけて立ち止まった。そこに書かれていた古代文字をしげしげと眺めていると、不意に後ろから声を掛けられた。マグス・ウルの闘士、神を恐れぬイコンだった。攻撃的な動作を一切見せないイコンに対して、アルターは巨人との対決が控えていることから同盟を結んでもよいとほのめかした。一方、カエレスティスはイコンに面と向かってお前は信用できないと率直に伝えたが、奴はこれから信頼を勝ち取るよう努めるとだけ答えた。
先に進んだ三人は、やがて驚くべき光景に出くわした。地上15メートルの空中に玄武岩の台座が浮かんでいたのだ。その真下の地面には、青銅のどらが置かれていた。イコンはローブのポケットから小さな青銅の鎚を取り出してどらを打とうとしたが、カエレスティスは奴の腕を掴んで説明を求めた。その時彼は、イコンの腕が彼の手首をたやすくへし折れるほど力強い筋肉質であることに気づいた。イコンは、これが真のマグスの一人、マグス・ジンと対話する唯一の手段であると語った。彼なら巨人スクリミールに対処する方法を知っている、と。何も言い返せないでいる二人に構わず、イコンは鎚をどらに打ち付けた。その途端、どらから金色の火花が吹き出し、彼らは転送の魔法によって上空の台座へと飛ばされた。
台座の上には中央に大きな棺が安置されており、その傍には燐光を発するように輝く老人が立っていた。彼こそが、真のマグスの中で最も権勢を誇ったマグス・ジンその人であった。マグス・ジンは、いかなる経緯でここに囚われることになったのか、そしていかにして復讐を果たすのかを三人に語り、彼らに助力を求めてきた。アルターが難色を示すと、ジンはここに永遠に留まって苦しむことになるぞと脅してきたため、慌てたカエレスティスは助力を約束した。そんな二人を尻目に、イコンは前に進み出て、ジンから化石と化した彼自身の心臓を受け取った。ジンは、勝利の紋章のある丘の道中に散らばっているスクリミールの骨を回収し、最後に丘の頂上でそれらを組み立てるよう告げると、転送の呪文を唱えて三人を再び地上へ戻した。
アルターとカエレスティスはすぐにイコンに詰め寄った。お前はスクリミールが既に倒されていると知っていたにもかかわらず、なぜマグス・ジンに会おうとしたのか。お前は最初から奴に仕えることを期待していたのか。イコンはそれらの指摘を素直に認めた。ジンに仕えることで、今のマグス達からよりも遥かに大きな見返りを貰えると踏んでいるのだ。
それ以上の議論を切り上げ、三人が丘の斜面を登っていくと、中腹にある洞窟の中で彼らは巨大な頭蓋骨を発見した。仰天して見つめる彼らの前で、それはしゃべり始めた。

【ゲームブックでの該当場面】
霧の平原→イコンと同盟→マグス・ジンの謁見→スクリミールを復活させることに同意→スクリミールの頭蓋骨発見

【ゲームブックと異なる設定】
イコンはすぐには裏切らない(ゲームブックでは、同盟を持ちかけた直後に攻撃してくる)
・玄武岩の台座は地上15メートル(ゲームブックでは、地上50メートルに玄武岩の島が浮かんでいる)
・アルターはジンとの謁見前まで、スクリミールがまだ生きており、勝利の紋章を手に入れるためにはこの巨人と対決しなければならないと思い込んでいた。
イコンがこの競技に参加した動機が語られる(ただし、真の動機は次の章で明らかになる)

【アルター&カエレスティスvs.イコン その1】
アルター(A)「(霧の中から突如姿を現したイコンに向かって)私はお前を知っているぞ。神を恐れぬイコンだな。」
イコン(I)「(東洋の儀礼的なお辞儀をして)この国では俺をそう呼ぶ者もいる。俺はマグス・ウルの闘士だ。そちらがマグス・バラザールに仕えているのと同じように。」
カエレスティス(C)「ここまでたどり着いたのは俺達だけか?」
I「ああ、そうだ。この道のりは厳しく、危険に満ちていたからな。皆脱落したのだ。」
<本能的に危険を感じて剣を抜くアルター>
I「そうか、俺は今死ぬのか。ここまでの道中で俺は魔法をほとんど使い果たしてしまった。だから、俺はお前の魔法の剣から身を守れない。そうしたければするがいい。」
A「(剣を収めて)どうしてマグス達の娯楽のために殺し合う必要がある?協力し合うことは競技のルールで認められているはずだ。我々はまだ巨人と対決せねばならないのだからな。」
C「俺の友人は嘘偽りのない魂を持っているんだ。それが彼の自慢なのさ。だが俺個人としては、飢えた狐に鳥かごの世話を任せるのと同じくらいにしか、お前を信用していないぜ。」
I「少なくとも、お前は正直であろうとしている。同盟の始まりとしては良いことだ。これからお前の信頼を勝ち取るよう努めよう。もちろん賞金は分け合わねばならんが、それでもお互いが潤うだけのものはあるはずだ。」
C「俺の友人は俗世に染まってなくてね。賞金は一切望んじゃいない。ただマグス・バラザールに頼みごとをしたいだけなんだ。」
I「(微笑みながら)名誉は単に異なる通貨というだけだ。金と宝石のようにな。さあ、もう行かないか?」
C「お前が先だ。(お前に背を向けるつもりはないぜ。)」

【アルター&カエレスティス&イコンvs.マグス・ジン】
マグス・ジン(Z)「生前、このマグス・ジンは、真のマグスの最高権力者だった。言い伝えの通り、わしはあらゆるものを統べていたのだ。だが、ちっぽけな嫉妬心がわしを失脚させた。愚かなライバルどもは、わしの下僕、巨人スクリミールを殺した。だが、わしを完全に滅ぼすだけのパワーがなかったため、彼らはわしを幽閉した。わしは千年もの間この地で眠り続けてきた。千年だぞ!それはあたかも、リヴァイアサンの鈍歩のように、スパイトの地下に眠る神のいびき声のように、ゆっくりと過ぎていった。その間、わしは計画を考え続けた。今や復讐は結実の時だ。だが、それにはお前達の助力が必要だ。」
A「なぜ俺達があんたを助けなければならないんだ?」
Z「地下世界の景色をよく見るがいい。冷たい岩が墳墓の蓋のように重く横たわり、じめじめした霧の死に装束がそれを覆っている。だが、地下では地獄の業火が荒れ狂っている。わしもやはりそうだ。死んで灰にはなったが、魂は千年の激しい憎しみを蓄積して燃え盛っている。もしお前達が拒否するというのなら、永遠の存在であるわしからすればほんの束の間でしかないが、お前達がこの先ずっと苦痛の叫び声をあげ続けるのを見ることにしよう。」
C「(慌てて)誰が断るですって?もちろん、お助けしますよ。」
Z「よろしい。ジンの忠実な召使いは我が栄光を分かち合い、誰よりも多い報酬で報われることだろう。」
A「(小声で)私は気に入らない。魔法使いが自分自身を他称し始める時はいつも良くない兆候なのだ。死んでいる魔法使いは特にな。」
C「それには同意するよ。だが、当分の間は奴とうまくやっていくしかないんだ。さもないと、ここで途方に暮れるはめになるぞ。」
I「(二人を横目でにらみつけながら)強き王よ、我らはどのようにお仕えすればよろしいでしょうか?」
<返答する代わりにジンが手を振ると、棺の蓋が開き、石塊を握りしめた骸骨が姿を現した。>
Z「わしの生前の姿だ。じゃこうの香りのするアスムリーのワインを舌で味わい、春の草地から吹くそよ風を肌で感じてから、なんと長き時が過ぎたか…。さあ、石を取れ!早くしろ!わしはもう一刻たりとも思い出の中に埋もれていたくないのだ。」
A「まるで石化した心臓のように見えるが。」
Z「それは巨人スクリミールの心臓だ。奴は真のマグス達によって破壊されはしたが、彼らの後継者たる、古代の栄光を強奪した現代の弱々しい成り上がり者どもに対する復讐の手段にはなりうるだろう。」

【アルター&カエレスティスvs.イコン その2】
<再び地上に転送された三人>
A「(先に進もうとしたイコンの袖を掴んで)ちょっと待て。お前は巨人に対処するためにジンの助言が必要だと言ったが、奴の話では巨人が既に死んでいるような口ぶりだったぞ。」
C「それに、もし今回の件に巻き込まれなかったら俺達はこれまで通りのままでいれたのに、今や奴を復活させることになってしまった!正々堂々としろよ、イコン。お前はこの全てを期待していたんだな?」
I「(しばらく考えた後で)それが、俺がこの競技に参加した理由だ。金だけのために、俺が世界の端から端まで旅すると思うか?ここのマグス達は、いくらよく見ても信用に値しない雇い主ばかりだ。俺は、彼らが地下競技を開催する真の目的は、敗者の暴力的な死を単純に楽しむことなのではないかと疑っている。それゆえ、勝利の紋章を持ち帰ることに対するマグス・ウルのわずかな勝利報酬を当てにするよりも、マグス・ジンと同盟を結び、彼の魔力がもたらす莫大な報酬の方が好ましいと俺は考えたのだ。」
C「同盟?奴は俺達をあまり高く買ってなかったぞ。お前も奴の脅しを聞いただろ、自分に仕えるか、地獄に直行するか、とな。」
I「もし我らがうまく仕えれば、彼はきっと正しく評価してくれるだろう。それに、既に事は成された。ここで立ったまま口論するのか?さもなくば、前進して我らを待ち受ける何らかの報酬を手にするかだ。」
A「(わけありのイコンに不安を抱きつつも)進もう。」

【感想】
超久々の更新。この章はとにかく会話が多かった…。イコンの行動に動機付けがされている点がとても重要です。
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CM1-12 ダージマン(The Dirge-Man)

【あらすじ】
口を大きく開けた炎の精霊達を見れば、二人のコラード人を殺しただけでは血の欲求が満たされなかったことは明白だ。奴らは人間のもろい肌に爪を突き刺し、血を沸騰させることを熱望しているのだ。
カエレスティスとアルターは、クレーターの尾根から斜面を下って洞穴の中へと逃げ込んだ。幸いにも、あの恐ろしい化け物どもはそこまでは追ってこなかった。
やがて、最初は煙と霧で隠されていた洞穴からの遠景が見えてきた。それは人の手によって造り出された不気味な光景だった。土墳と石柱からなる不毛の平原には、地下洞窟の天井に届きそうな高台があった。その頂上には、自然ならざる源から発せられる灰白色の光に満たされ、輝く金属の小円紋で飾られた立派な旗が立っている。
「勝利の紋章だ!ついにゴールにたどり着いたんだ!」歓喜の叫び声をあげるアルターに、カエレスティスはそっけなく返した。「まだまださ。」彼が指さした先には、平原とこちら側を隔てる幅の広い深淵が広がっていたのだ。
橋も見当たらない。失敗は避けられないと思われた時、一匹のダージが飛来した。ハッグが予言したドロクターという名のダージマンだ。ファルタインを呼び出せる魔法の指輪を譲る代わりに谷を渡してもらうことでいったんは話がついた。だが案の定、ドロクターは谷を飛んでいる最中に、今すぐ指輪を寄越さないと二人とも谷に落としてやると迫ってきた。
ここでカエレスティスは機転を働かせた。ファルタインを呼び出すと、ドロクターをダージに変えた魔法を解くように命令しようとした。死の恐怖におののくドロクターは、二人を無事に届けると慌てて誓った。
谷向こうに着いた後、先ほどの不誠実に憤ったアルターは剣を抜いてドロクターに迫ったが、結局奴を見逃してやり、二人は先を急いだ。

【ゲームブックでの該当場面】
・炎の化け物スキアピールから逃亡→ダージマンと交渉して谷を渡る
・谷を飛んでいる途中に報酬を今すぐ寄越せと脅してくる

【ゲームブックと異なる設定】
・ダージマンとの交渉材料は、今回はショーミアーノの指輪だが、ゲームでは遅行性の毒薬キメラのつば。

【カエレスティス&アルターvs.ドロクター その1】
ドロクター(D)「(ばかにするように)おおい、この崖は翼のない者には困難な障害だと思わないか?」
カエレスティス(C)「(腹立ちを抑えながら愛想よく微笑んで)そうなんだ、手伝ってくれないかい?」
D「俺ならお前達を乗せて飛べるぞ。」
アルター(A)「そうしてくれると非常にありがたい。」
D「その感謝の気持ちが俺には一番価値があるんだ。俺がそいつを無意味とみなしてるなんて思わないでくれよ。だがそれでも、物質的かつ実物の適切な報酬が契約の見返りとして必要だろう。それなしでは、我々の間の取引は不正確で満足いかないものになってしまう。」
A「(用心しながら)その翼なら、お前は力強く飛ぶに違いない。話に費やす熱意の半分もあれば、家も持ち上げて飛べるんだろうな。」
D「それはつまり、俺がしゃべり過ぎってことか?不必要に回りくどいと?俺はいつも完璧に明快な取引を交わしたいだけなんだ。」
C「俺達は、お前の取引に対する几帳面さに感嘆して評価しているんだ。俺の友人は安心材料を探しているだけさ。何と言っても、峡谷はかなり深いんだ。」
D「深さを気にすることはないぜ。下は溶岩で満ち満ちているんだからな。」
C「もちろん、お前が俺達を落とさない限り、深さも下にあるものも気にはしないさ。」
D「(あくびをかみ殺しながら)まったくそうだ。それで、支払いについてなんだが-。」
<返答として、カエレスティスは指を見せた。その時幸運にも、近くで間欠的に噴出した溶岩の光を受けて、彼の指にはまった金の指輪は燦然と輝いた。>
D「なんて途方もないお宝だ!そいつを俺にくれるなら、すぐにお前らを乗せて谷を飛び越えてやる。」
A「ちょっとした修正はあるが、俺もそのつもりだ。俺達を谷向こうに運んでくれた後で、この指輪を渡そう。」
D「(不機嫌そうに)お前は難しい取り引きを持ちかけているんだぞ。だが、今まで地下競技で危険に立ち向かってきた者達から多くを期待すべきではないだろうな。よし分かった、それに同意し-。」
C「まだ全部じゃない。『破棄条項』を忘れているぞ。」
D「俺には語彙も法律に関する専門知識も足りないんだ。『破棄条項』なんて聞いたこともないぞ。」
C「基本的には、お前の気が変わった時に、契約で同意した報酬やサービスを受け取る権利をお前が放棄するというオプションのことだ。」
D「分かった。もしお前達が『破棄条項』を行使したら、俺は単純にお前達を谷に落とせばいいんだな。」
C「ああそうだ。でもその時は、お前が指輪を貰えるという契約は何もなくなるぞ。」
D「そんな本末転倒な条項を含める価値はほとんどないような気がするんだがな。」
C「現在の法律では、同意が有効とみなされる場合は、それは基本的なことなんだ!」
D「いいだろう。」

【カエレスティス&アルターvs.ドロクター その2】
<二人を乗せて飛びながら、ちょうど谷の中間に差しかかった頃。>
D「これから話す事柄を切り出すうまい方法を探していたんだが、思いやりを損なわずに済ませられそうもなくて途方に暮れてしまった。だから、率直に言うことが一番だと思うんだ。今すぐその指輪を寄越さなければ、宙返りしてお前達を溶岩の中に落としてしまうぞ。」
C「なぜこの指輪が特別なのか知りたくはないか?それは、こいつには魔法の小悪魔が住んでいるからなんだ。見ろ!」
ファルタイン(F)「またあなたですか?てっきり死んだと思っていました。」
C「(ファルタインに向かって)このドロクターは、俺達を乗せて谷を渡っているんだが、元々今のような巨大な翼のある怪物だったわけではないんだ。彼はかつて人間だったのだ…。」
D「何を企んでいるんだ?」
C「(ドロクターを無視して)彼は魔法で姿を変えられたんだ。お前の魔法で彼をかつての姿に戻せるか?」
F「もちろん。こんな簡単なことはありません。今すぐですか?」
D「待て!もしそうなったら、お前達も溶岩に落ちてしまうぞ。」
A「(カエレスティスの意図を察して)そうなったら、それが我々の運命さ。」
C「もしお前が『破棄条項』を行使しなかったならな。」
D「する!するよ!そいつを追っ払ってくれ。そいつにも指輪にも関わりたくない。」
C「(ファルタインを指輪に戻してから)ここで降ろせ。もしこれ以上裏切るようなことがあったら、あっという間に灰にしてやるからな。」
A「(地上に着くと、すぐに剣を抜いて怪物の腹に剣を突き付けながら、)悪魔め!お前の二枚舌を剣で突き通してやる。」
D「(うなだれて)そうしたいなら、どうぞやってくれ。そいつが俺を苦悩から解放してくれるだろう。俺は自分に対する処罰が嫌なんだ。怪物でいるくらいなら、むしろ死にたいくらいだ。」
A「さあ行け、視界から消え失せろ。クラースのマグス達がお前に呪文をかけた時、お前は彼らが選んだ罪に値していたのだ。」
D「俺が?俺は人間としては不正直だったかもしれんが、マグスが俺から造り出した怪物ほど邪悪じゃなかった。定命の者よ、さらばだ。もし地下競技を生き残ることができれば、マグスが欺瞞の王である所以を知ることだろう。」
C「(飛び去るドロクターを見送りながら)奴は何を言っているんだ?」
A「我々の気力をくじこうとする最後の悪意に過ぎないさ。」

【感想】
ずいぶん間隔が開いてしまいました。毎度おなじみ、ブラッドソードらしさ全開のやりとりです。ゲームの方も、まだ色々手直しは必要ですが概ね完成しました。GWということで暇を持て余している方は、「ファティマの庭園」へどうぞ。

CM1-11 炎の池(The Lake of Fire)

【あらすじ】
二人を取り囲んだのは、悪魔神バロールへの狂信によって人間性を喪失した崇拝者達だった。奴らは帰依の証として舌を切り落とし、身体は葬儀で死者に施すような灰色に塗りたくっていた。顔は白いドクロの仮面に隠れてよく見えない。死の静けさの中、攻防は繰り広げられた。奴らの中の最強の闘士と対峙したアルターは、組みついてきた相手を剣ではなく巴投げで放り投げた。カエレスティスがそいつにとどめを刺すと、形勢は二人の方に傾いた。アルターが敵の火打石のナイフによって腕に深い切り傷を負ったものの、全ての敵を撃退することに成功した。
カエレスティスは、狂信者達のねぐらと思われる洞窟をクレーターの斜面に見つけた。捜索の結果、巻き物が見つかった。それは、古代マグスが用いた言語から派生したダッカンディー語で書かれていた。アルターが解読すると、それが巨人スクリミールとマグス・ジンについて言及されたものであると判明した。
クレーターの尾根を進むと、蒸気の上に突き出た高い石の塔門にたどり着いた。塔門からは地下競技場を一望することができた。前方には平原が広がり、さらにその先には小高い丘があった。そこに勝利の紋章があるとアルターは直感した。
アルターの腕の切り傷から未だに出血が続くのを見て、カエレスティスは自分のハンカチを差し出した。金文字で”C”と刺繍されたキータイの絹織りのそれは、フェロメーヌの仕立て屋に銀貨二十枚も支払った逸品だという。アルターはそれを受け取って止血すると、今後は彼を友人とみなすと伝えた。それに対して、後でエールの大ジョッキをおごってもらってもいいな、とカエレスティス。
だが、塔門から下りて溶岩の池のそばまで来た時、池を迂回するルートがないことに二人は気づく。もはやこれまでかと思われたが、塔門の壊れた大扉がイグドラスの硬材だと見抜いたカエレスティスは、それをいかだにすることを提案する。
溶岩の池をいかだで渡り終えようとした頃、クレーター沿いの小道には二人のコラード人の戦士-マグス・キトの闘士-がいた。最初彼らが何と戦っているのか分からなかったが、戦士達は悲鳴をあげて次々と溶岩の池に落ちて絶命した。池の斜面にたどり着いてよじ登ったアルターとカエレスティスは、後ろを振り向いた時、敵の姿を目にした。それはまるでハロウィンの人形のような炎の化け物だった。

【ゲームブックでの該当場面】
・死物神との戦闘→死物神のねぐら→塔門→溶岩の池をいかだで渡る

【ゲームブックと異なる設定】
・死物神との対戦後にたどり着いた先が、拝殿ではなく塔門に変更されている。
・壊れた扉に使用されている材木が熱に強いことを見抜くのは、原作では僧侶(もしくは、雇い主のマグスかファルタインの助言)。
・二人の冒険者は、マグス・キト(Kito)の闘士だった。

【感想】
ブラッドソードのPCゲーム化に時間を取られて、こちらは全然はかどっていません。このPCゲームについては「ファティマの庭園」に書き込んでいますので、興味のある方はどうぞ。まだ第一巻の前半までしかできていませんが。
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CM1-10 死神の顔(The Face of Death)

【あらすじ】
勝利の雄叫びをあげた後、盲目のヒュロンダスはそれでも用心深く杖を前方に振り回しながら橋の上を探った。彼の杖が橋の縁に突き出された時、橋の下からにゅっと手が伸びて杖の端を掴んだ。驚いたヒュロンダスは別の呪文を唱え始めたが、杖を鋭く引っ張られてひっくり返りながら空中へと放り出された。やがて眼下の遥かな深みで彼の最後の呪文が爆発し、そして消えた。カエレスティスは機敏に身体を引っ張り上げると、橋を渡ってアルターに合流した。
最後はイムラガーンの番だった。「墓を出でよ。」ガーゴイルの合図で、橋の下の霧が渦を巻いて濃くなると、それは僧帽を被った背の高い女性の姿となった。彼女は橋の真ん中で震えるイムラガーンに近づくと、その正体を露わにした-死者の女王にしてあの世の支配者、ヘラだ。橋の向こうからアルターとカエレスティスが叫んでも励ましの声は届かず、イムラガーンに抗うすべはなかった。二人には骨の怪物にしか見えずとも、彼の目には美しい女神として映っているのだ。やがて彼はヘラとともに橋の上から姿を消した…。
ショーは終わった。残された二人は、神殿前の大鍋に戻ったハッグ達から、これまでにここを通過した闘士やこの先の危険などについて聞き出す。その後、神殿を避けながら別の高台へと続く尾根を辿っていくと、そこで二人は奇妙な者共に取り囲まれてしまった。

【ゲームブックでの該当場面】
・イムラガーンが橋を渡る→ヘラとともに姿を消してこの世から退場→ハッグからここを通過した闘士やこの先の危険について聞き出す→ハッグからひしゃくを奪って鍋の料理をぶちまける→神殿を素通りして尾根を進む→死物神の集団の襲撃
・イムラガーンはずんぐりした体格で、最も調子のいい時でさえ足取りは軽くない。
・鍋の料理は試さず
・イコンと垢だらけの二人のごろつきが彼らよりも先行

【ゲームブックと異なる設定】
・ヒュロンダスの倒し方
・ヘラの登場の仕方や会話(ゲームブックでは火柱から、今回は霧の中からそれぞれ現れる)。
・ハッグ達の料理の材料に加わったのは、ゲームブックでは橋で仲間を失った僧侶だったが、今回は剣士に変更されている。
・ハッグから情報を聞き出す方法が、ゲームブックでは魔術師の盲目的服従の呪文だったが、今回は金銭の支払いとなっている。
・ダージマンに名前がある

【イムラガーンvs.ヘラ】
ヘラ(H)「イムラガーン、お前の相手は私よ。なぜなら私は死神で、お前は私のものなのだからね。」
イムラガーン(I)「(震えながら)いやだ、やれるものならやってみろ。俺は第二の生命を授かったんだ。それをなぜお前にくれてやらねばならん?」
H「お前が私から無理矢理引き離されたから、私はこの地でお前を長い間捜していたんだよ。お前と私は同じ世界に属するのだからね。私なしではお前が孤独だということは分かってるよ。」
I「違う!」
カエレスティス(C)「イムラガーン!そいつの言うことに耳を貸すんじゃない!お前は俺達の仲間だ。お前は生きているんだぞ!」
アルター(A)「(重々しく)彼の所まで俺達の声は届かない。」
<イムラガーンは渾身の力でヘラを突き飛ばして橋から落とすが、振り返るとそこに彼女が再び立っていた。>
H「私からは逃れられないよ、イムラガーン。」
<抵抗を諦め、ヘラの抱擁を受け入れるイムラガーン。二人の姿は橋の上からゆっくりと消えていった。>
C「あれを止められるのなら、今までで一番死神に近づいてやりたかったぜ。」
A「修道院に戻ったら、私はイムラガーンの魂のためにロウソクを灯すことにしよう。少なくとも、彼はそれに値する男だった。」

【ハッグとの取り引き】
ハッグ(Ha)「どんな未来が待ち受けているか、知りたくはないかえ?」
アルター(A)「元はと言えば、私が愚かにも占いをしてもらったことから全てが始まったのだ。だから今後は、どんな未来も受け入れようと思う。」
カエレスティス(C)「ずいぶん哲学的だな。だが俺は今、ちょっとした警告は嫌じゃない気分なんだ。続けていいぜ、婆さん。」
Ha「手順も知らんのか?最初に古い銀貨をよこすんじゃ。」
A「(オボル銀貨を取り出したカエレスティスに驚いて)お前はそれをあの船頭に渡したのではなかったのか?」
C「いいや。俺はこれをあいつに見せただけだ。その後、これをこっそり手のひらに隠して、代わりにペニー銅貨を投げてやったんだ。あいつには違いが分からなかったし、この銀貨は後できっと役に立つと思ったんでな。」
A「コイン収集家に売りつけるつもりだったという方が、もっとあり得そうだがな!」
C「(肩をすくめながら)悪銭身につかず、さ。」
Ha「(カエレスティスから放られた硬貨をしっかりと確かめてから)質問は一つだけだよ。」
C「俺達が直面する最大の敵は何だ?」
Ha「ふーむ。二つの危険に立ち向かわねばならぬから、答えも二つじゃ。一つは巨人スクリミール、マグス・ジンがそいつを蘇らせるように頼んでくるじゃろう。とはいえ最初の試練は、溶岩の谷をダージマンのドロクターの背に乗って飛び越えることじゃ。あいつは不正を働いた罪で人間からダージに姿を変えられた男でね、奴が裏切ると考えておけば間違いないぞよ。」
A「助言のおかげで賢くなったかは怪しいものだが、我々は自分達の道を進むまでだ。」
Ha「お待ち!このスープを味わってお行き、この先の試練に備えて力をつけとくためにね。」
C「これは何だ?」
Ha「ただのうまいスープさ、さあお飲み!」
<ひしゃくを奪い取ったアルターから中身を浴びせられたハッグは、のけぞったはずみに鍋の中に落ちてドロドロに溶けてしまう。>
C「未来を占うのがあの婆さんの特技だというなら、なぜ自分がこうなることを予見しなかったのだろう?」
A「思うに、対価を支払った者の未来しか見れないのだろう。彼女はひどくケチみたいだからな。」

【感想】
全体的に見ると、この小説版ではゲームブックからかなり内容をいじっている作者ですが、ここは変えてくれませんでした。さらば、イムラガーン…( * ̄)m 〔十〕 アーメン。

CM1-9 深淵(The Chasm)

【あらすじ】
アルターら三人が転送された先には、驚くべきパノラマが広がっていた。そこは奥行二キロメートル以上、高さも百メートルはありそうな、火山の溶岩に照らし出された洞窟だった。冷たい岩を通り抜ける際に氷漬けの記憶が呼び起こされたイムラガーンはショック状態に陥りかけるが、カエレスティスの冗談によって精神の安定を取り戻す。徐々にではあるが、彼らの間に信頼関係が築かれつつあった。
彼らのいる岩場からは、緑がかった白い霧の中に浮かぶ三つの高台が見えた。最初の高台とは幅一メートルくらいの手すりのない橋で繋がっており、その下では砦の下水が轟きながら流れている。橋の向こうにあるすすけた神殿のテラスでは、ハッグ達がテラスに集まり、橋を渡ろうとしている三人に向かって物を投げたりヤジを浴びせたりしてきた。
一番手はアルターだった。彼が橋に足を踏み出すと、天井近くに彫られた巨大なガーゴイルの頭が轟くような声を発した。「お前達を待ち受ける死者に立ち向かえ。」同時に、彼の背後に輝くエネルギー障壁が発生し、もはや後退は不可能となった。次のガーゴイルの合図で姿を現したのは、錆びたチェーンメイルの胴着とハンマーを装備した不格好なバーサーカー、ベオルン・スミスハンマーだった。そいつはアルターの父親と因縁があるという。自分の父親の事を聞き出そうとするものの、聞く耳を持たないベオルンを彼は仕方なく倒す。奴の死体を橋から蹴落としながらも、父親の手掛かりが永遠に失われたことに深い悲しみを覚えるアルター。
彼が橋を渡り終えると、今度はカエレスティスが進み出た。ガーゴイルの呼び掛けで現れたのは、盲目の老魔術師ヒュロンダスだった。説得を試みる彼を遮って、奴は呪文を詠唱した。まばゆい緑色の炎が炸裂した後、橋の上にカエレスティスの姿はどこにもなかった。

【ゲームブックでの該当場面】
・ガーゴイルの橋の手前側(滝をくぐらない方)を渡る
・アルターは戦士のキャラクターの選択肢に、カエレスティスは盗賊のキャラクターの選択肢にそれぞれ該当。

【ゲームブックと異なる設定】
・ダージの群れは襲ってこない
・滝をくぐるルートはなし
・ベオルンはアルターと面識なし
・ヒュロンダスはカエレスティスのとばっちりを受けて処刑された(ゲームブックでは決闘で倒したことになっている)
・ヒュロンダスの呪文は”緑の”火?(ゲームブックではソードスラスト)

【イムラガーンのうん蓄】
・現在のマグスの魔力が地底火山を鎮めていると知ってアルターとカエレスティスが感心していると、イムラガーンは彼らの魔力は真のマグス達とは比べるべくもないと言い放った。この冒険が終わったら、エールでも飲んでくつろぎながらその辺りの事を教えてあげようとも。←「俺…この○○が終わったら、○○するんだ…」的フラグ発生
・滑空してくるダージの群れを見てアルターが剣に手をかけると、イムラガーンはそれを制した。奴らは死肉喰らいなので襲ってはこない、と。

【アルターの追加情報】
孤児として修道院で育てられた彼は、両親を知らない。

【アルターvs.ベオルン・スミスハンマー】
ガーゴイル(G)「灰から蘇れ。勝者は生を受けるであろう。」
バーサーカー(B)「待ち望んだ敵か。ここは俺達が入れ替わる場所だ。」
アルター(A)「待ち望んだ敵?戦わねばならないのなら私は喜んで戦うが、なぜ知りもしないお前と戦うのかわけを教えてくれ。」
B「お前は俺を知らない。俺達の武器は今日まで一度も交わったことがないのだからな。だが、俺はお前の血筋に対して強い憎しみの借りがある。俺はベオルン・スミスハンマー、二十年前にお前の父親によって殺されたのだ。今こそ俺の命の対価を払ってもらうぞ。」
A「父だと?お前は私の父を知っているのか?それなら教えてくれ-(ベオルンが向かってきて中断)。」

【カエレスティスvs.ヒュロンダス】
ガーゴイル(G)「死から甦れ。ヒュロンダス、お前の待ち望んだ敵が橋を渡ろうとしている。そいつを止めれば、貴様は命を取り戻すであろう。」
ヒュロンダス(H)「わしの待ち望んだ敵よ、ここはわしらの因縁についに決着をつける地だ。」
カエレスティス(C)「因縁だって?俺はあんたを見かけたことなどないぜ。」
H「三年前、わしはお前の犯した罪のうちの一つのために逮捕され、処刑されたのだ。三年間、わしはお前に報復するチャンスを待っておった。」
C「それなら、あんたの復讐する相手は、あんたに有罪判決を下した治安判事だろう。彼の間違いは俺の落ち度じゃない。それに、確かに俺は若い頃に二、三の違法行為を犯したが、処刑を正当化するような悪事は働いちゃいない。その判事は不当に厳しかったんだ。」
H「このおしゃべりの若造が!わしが復讐の機会をみすみす逃すとでも思っているのか?」
C「どうぞ復讐してくれ。だが、罪のない俺のような若者にじゃないぜ。ヒュロンダス、新しいかりそめの命を-アンデッドか、他の何かかもしれないが-その判事を探し出すことに使うんだ。あんたの人生を無駄にしたのはそいつのまずい審判なんだ、だから-(ヒュロンダスの金切り声で遮られる)。」

【感想】
前半の山場、ガーゴイルの橋です。ゲームブックでは誰しもかなり苦労した場面だと思います。
年齢不詳のイムラガーンですが、若い主人公の二人よりは年上と思われ、そのためかマグスや地下競技場についての知識も豊富なようです。そういえば、ゲームブックではクラースの歴史が説明されておらず(おまけに日本語版では巻末glossaryが省略された)、真のマグスと現在のマグスの違いがよく分かりませんでした。
アルターの父親の件は伏線のつもりだったのかもしれませんが、結局回収されることはありませんでした。残念。

CM1-8 イムラガーン(Imragarn)

【あらすじ】
カエレスティスが目を覚ますと、そこは地底湖のほとりの洞窟の中だった。溺れる寸前だったにもかかわらず、エメラルドのお守りをあと一歩で取り逃したりお洒落な服が台無しになったりしたことを残念がる彼に、アルターはただ呆れるしかなかった。
洞窟を探索すると、戦士が閉じ込められた氷塊が見つかった。彼を見捨てようとしたカエレスティスに対して、そのままにはしておけないと主張したアルターは、洞窟内の祭壇に置かれていた炎の燃え盛る鼎(かなえ)を持ってきて、氷塊を融かしにかかった。やがて氷塊は蒸気をあげながら融解し、戦士を助け出すことに成功した。驚くべきことに、彼はすぐに息を吹き返した!彼はイムラガーンと名乗った。9年前にこの競技に参加したものの、氷の魔術師の魔法によって氷漬けにされていたという。彼は助けてもらったことに感謝し、二人に同行することになった。
洞窟の先には、上下逆さまの彫刻が施された巨大な両開きの扉があった。その扉を開けると、そこは上下が逆になったホールだった。彼らが天井を歩くにつれて、天井の上に積もった埃が床の上に落ちていく。そして、ホールのはずれには、やはり逆さまの状態で座った金色のローブの男がいた。男が魔法をかけると、三人は石の床へと沈んでいった。

【ゲームブックでの該当場面】
・地底湖の対岸→イムラガーンを解凍・救出→キエフのいるホール
・青銅の祭壇から鼎を持ってきて氷を融かす

【ゲームブックと異なる設定】
・湖を泳いだことによる戦闘力低下のペナルティは特になさそう
・死者の手やコインが埋もれた石塚は登場しない
・オシリスのお守りを使わなくてもイムラガーンが蘇生
・洞窟内に祭壇はあるが、メルカニアの多産の女神フレイヤを祭っているという記述はない。従って、祭壇に祈って生命力を回復するシーンもなし。
・洞窟の先は、神の頭がある分岐点はなく、一本道。
・地底界のさらなる深みに転送してくれる男は、自分には名前などないと言った(ゲームブックではキエフ)。金のスパイラルによるゲーム勝負もなく、従って賞品のプリズムや氷の宝石も登場せず。
・この男のいるホールが上下逆さま

【イムラガーン】
・カールランドのアクタン出身
・マグス・ラグロールの闘士として、九年前に数人の仲間とともに参加(ファシュマーだけではない)。
・長髪
・革の鎧
・氷漬けの間に剣を奪われている
・カエレスティスのあからさまな不信感に対して、「俺には君達の信頼を要求する権利はないが、これから勝ち取っていきたい。」と所信表明。
・九年前は金と栄光を夢見ていたが、今は生きて地上に出られるだけでも嬉しいとのこと。
・記憶が一部失われている(上下逆さまの彫刻のいわれを以前知っていたらしいが思い出せず)

【台無しになったカエレスティスの衣装】
・マント:湖の底
・帽子:半分沈みながら、カエレスティスの眼前で暗い波間を漂っていく。
・剣:無事
・絹のシャツ:しわしわで破れかぶれ
・ベスト:自分が嘔吐した湖の黒い水と胆汁でぐっしょり →脱いで湖に投げ捨てた

【感想】
イムラガーン復活!ちょっと頼りなさそうなので、ゲームブック同様ランク2なのかも。
ここで、しゃれ男・カエレスティスの衣装が台無しになりました。ちなみに彼はCM1-6で、洞窟内の湿気がベルベットをだめにしてしまうと嘆いています。今回はそれどころじゃなかったですが、自分の身よりもお洒落を気にする辺りが彼らしいです。ただ、二人には知る由もありませんが、あの死者を復活させるエメラルドのお守りには、確かに命を賭ける価値がありそうです。

CM1-7 死神の船頭(Death's Boatman)

【あらすじ】
激高したアルターに胸ぐらを掴まれたカエレスティスは、昨日柄頭の宝石を彼からスリとって、それをたった今ファルタインに渡してしまったことを白状する。盗んだ時はお互いまだ見ず知らずだった、彼の命を救うための取引だった、彼がこの競技に参加した目的が宝石を取り戻すためとは知らなかった-。カエレスティスが次々と並べる言い訳に、アルターはもはや怒りを通り越して失望するだけだった。険悪になった二人だが、この過酷な競技を生き残るため、地上に出るまでは引き続き共に行動することに。
墓守が守護していた扉の向こうには地底湖が広がっていた。湖畔に並んだ石棺を暴いて銀貨を手に入れた二人は、船頭が要求してきた代金を支払って船上の人となる。途中に浮いていたブイを引き上げると、その先にはエメラルドのお守りを着けた骸骨が入れられた檻が繋がっていた。その時、骸骨から亡霊が浮かび上がり、二人に襲いかかってきた。魔法の剣が亡霊に効くと分かって、踏み止まって戦うアルター。だがカエレスティスは、そいつが船を破壊しようとしているのに気づいた。彼がアルターを掴んで一緒に冷たい湖に身を投げた直後、船は亡霊の爪によって真っ二つになった。水面に顔を出したアルターは、亡霊が霧散したのを見届けたものの、再び彼を救ってくれたカエレスティスの姿がないことに気付いて捜索を始める。ようやく見つけた時、カエレスティスは湖底に沈んだ檻の中の骸骨からエメラルドのお守りを掴み取ろうとして檻に腕を挟まれ、浮上できずにもがいている状態だった。必死に伸ばしたアルターの指先が、かろうじて仲間の手に届いた…!

【ゲームブックでの該当場面】
・地底湖の湖畔で墓荒らし→代金を払って船に乗り込む→ブイを引き上げて亡霊に襲われる→湖に飛び込んで泳いで逃げる
・修道院で学んだ古代伝承知識により、アルターは船頭の正体が古代エンフィドールでケロンと呼ばれる死者の魂を運ぶ者であることを突き止めた。さらに、近代エルスランドの農民の間では嘆きのスダッグと俗称されていることも付け加えた(カエレスティスには、歴史の授業はよしてくれと言われた)。

【ゲームブックと異なる設定】
・墓守が守護していた扉の向こうが、鋼鉄の笏のある部屋から地底湖へ続く洞窟へと変更されている。従って、鋼鉄の笏は登場せず。また、転送される祭壇も登場せず。
・石棺から出てきたのは古代の銀貨が一枚。一方、ゲームブックでは灰色の真珠や銅の鍵(ちなみに、対岸にある洞窟の石の山からは、らせんと縞模様が描かれた大きな金貨が出てくる)。
・船頭の要求額はオボル硬貨一枚(ゲームブックでは金貨四十枚で法外に高額)
・亡霊の名前は特になし(ゲームブックでは「エイドロン」)。特殊能力(脳への致命攻撃)も不明。
・船頭は亡霊との戦闘中に湖に飛び込んで逃亡
・亡霊が船を破壊

【アルターvs.カエレスティス】
アルター(A)「(胸ぐらを掴みながら)お前はあいつ(=ファルタイン)に宝石を渡したな。あれをどこで手に入れた?」
カエレスティス(C)「どこでかって?うう、手を放してくれ、これじゃ話せない。」
A「(手を放して)さあ、続けろ。」
C「お前だって分かっているはずだ、二人がまだ知り合う前のことさ。お互いによそ者だった、そうだろ?お前も俺も何の縁もなかったんだ。」
A「主は人類みな兄弟だと説いている。」
C「ああ、そうだ!そいつは他人を許せとも説いていなかったか?それに、悔いた罪人は-。」
A「お前は盗みを働いた。私のポケットから宝石をスリとったんだ。私にはそれが信じられない。お前はどうしてそんなに品位を落とせるのだ?」
C「それは認めるよ。俺にはただ情状酌量の余地があるだけだ。つまり、俺は貧窮していて、その時金が必要だった。その後、別な奴のポケットをすったのもそれが理由さ。だから衛兵に逮捕されそうになったんだが。」
A「あれは別々の出来事じゃなかったんだな。それを聞いてよかったよ。お前には逮捕されるにふさわしい理由があったんだからな。」
C「呆れて何も言えないぜ。お前が初めての街で競技に参加した理由があの宝石にあったなんて、俺は知らなかったんだ。もしこれを無事に切り抜けたら、きっと取り戻してやるよ。」
A「お前はあれを魔法の妖精に渡してしまったんだ!議論の余地はない。お前は見下げ果てたスリで、時には墓荒らしになり、私から物を盗み、逮捕を逃れるためにこの競技に逃げ込んだわけだ。」
C「だが、俺はお前の命を救ってやったんだぜ。その剣もあげたじゃないか。」
A「なら、おあいこだ。もし我々が生き残ってこれが終わったなら、別々の道を歩もう。その時は間もなく来るだろうがな。」
C「いいだろう。次にお前が殺されそうになっても、俺は助けてやらないからな。」

【感想】
当然の様に怒るアルターですが、何だかんだでカエレスティスを助ける辺り、やはり修道士としての徳の高さがうかがえます。また、カエレスティスもやはりアルターを助けており、根っからの悪党ではなさそうです。見ず知らずの二人の男が偶然にも出会い、反目しつつも友情を深め合っていく過程が描写されており、なかなか面白い作品に仕上がっていると思います。
墓を漁って金を探すということは、二人は所持金ゼロだったのかもしれません。ということは、どのみちアルターは旅費を稼ぐ必要がありましたね。ちなみに、この先も貧乏旅が続きます。

CM1-6 ファルタイン(The Faltyn)

【あらすじ】
亡者の数が多過ぎることと、既に生きているとは言えない相手に剣が通用するか確信が持てなかったことから、敵に背を向けるのは不本意ではあったものの、アルターは発見したばかりの通路に退避した。身体が大き過ぎて入って来れない亡者を尻目に、二人はトンネルのような通路を進んだ。
通路は床に鉄格子がある洞窟で行き止まりになっていた。やがて、その真下の廊下に三人のバーバリアンがやってきた。奴らが通り過ぎた後、アルターとカエレスティスは鉄格子を外して廊下に降り立った。像の示す左方向とは逆の白い大理石の廊下をたどると、行き止まりの扉の向こうから剣戟の音が聞こえてきた。二人が部屋に飛び込むと、そこではバーバリアンと黒装束の戦闘が繰り広げられていた。青の塔での一件もあり、劣勢のバーバリアンに味方するアルターだが、結局双方全滅する。
今度は黒い大理石の廊下をたどっていくと墓守に出くわした。奴は魔法の剣を持つアルターに、ハンデなしで戦おうと素手での格闘を持ちかける。アルターがそれに応じて武器を手放した途端、奴は宙返りをしてビスレットの剣に飛びつき横取りしてしまう。アルターは墓守の剣を拾い上げたものの、それは柄の上から先が既に折れていた!カエレスティスが自分の剣をアルターに放ったが、墓守が魔法の剣を一閃させて叩き落としたため、アルターの手には届かなかった。次第に追い詰められていく仲間をなすすべなく見つめながら、「せめて俺の剣を取り戻せたなら…」とカエレスティスが願った時、傍に妖精が現れた!「私はファルタイン、あなたの指輪の妖精です。」突然の出来事に戸惑いつつも、ファルタインと取引した彼は、墓守の足元に転がっていた自分の剣を取り戻した。そして、アルターにとどめを刺そうとしていた墓守の背後に忍び寄ると、奴を一突きで倒した。命の恩人カエレスティスに感謝感激するアルター。だが、姿を消す間際にファルタインが言った。「彼が私に何をくれたのか知っても、あなたが彼に感謝し続けられるか疑問ですね。」奴が勝ち誇ったように指の間に持っていたのは、あの柄頭の宝石だったのだ。

【ゲームブックでの該当場面】
・雇い主がマグス・バラザールの場合のルート:鏡の向こうの通路→白い大理石の廊下→黒い大理石の廊下
・そこから急に、マグス・カルーゲンのルート:墓守

【ゲームブックと異なる設定】
・亡者から逃走する際、最後尾のキャラクターが打撃を受けずに済んでいる。
・黒と白の通路の分岐点に人の頭をかたどった像(左向き)がある。ゲームブックでは別の分岐点にあった。
・黒装束の飛び道具が手裏剣ではなく投げ矢(吹き矢?)で、毒を使用している。そのためか、黒装束の方が優勢。
・バーバリアンと黒装束は、ゲームブックでは二対三だが、今回は三対二。黒装束の一人はここまでで既に倒れたのか、この部屋にはいない。
・黒い廊下の途中に巻物の置かれた部屋がなく、廊下の先もキエフのいる円形闘技場ではなく墓守の警護する戸口に変更されている。
・墓守はゲームブックでは正々堂々と一騎打ちしようとするが、今回はアルターを騙して魔法の剣を横取りするという卑怯な手を使う。
ショーミアーノの指輪の効果が、戦闘勝利後の生命力回復からファルタインの招集に変更されている。

【バーバリアン】
・地下競技場の入り口で見かけた三人は苦痛の荒れ地出身で、雇い主はマグス・トール(CM1-4参照)。
今回出くわした三人はメルカニア出身で、雇い主はマグス・ゾン(Xon)。
・カエレスティスいわく、どちらの集団も利口ではないとのこと。
・名前は、エレック、スノッリ、もう一人は不明。
・雇い主からもらった地図を所持。片方の通路は行き止まりとのこと。

【バーバリアンvs.黒装束】
・アルターとカエレスティスが部屋に入った時、バーバリアン三人のうち二人は毒が塗られたトゲのような物が首に刺さって死に瀕して倒れており、残りの一人も肩に毒の投げ矢を受けてよろめきながら戦っている最中。
・その残り一人も、手首を剣ごと三日月刀で切り落とされてしまう。それでも、切り落とされた腕で黒装束の顔を殴りつけて奮闘。アルターが黒装束を二人とも倒したのを見届けた後、地上で待つ妻への遺言を彼に託そうとしたが、出血多量で果たせず死亡。

【墓守】
・黒光りするリングメイルと黄土色の粗末な外套
・カルーゲンの地下迷路の民兵である拷問部隊所属
・地下聖堂や地下納骨堂を墓荒らしから守るのが役目(ここで、カエレスティスが時々墓荒らしをしていることが判明)。
・何か月も日光を浴びずに過ごす
・何者にも頼らず、暴力と殺戮のためだけに生きる。
・彼らが唯一認めるモットーは「死は我が兄弟」

【ファルタイン】
・エルフのような容姿
・淡青色の肌
・ラベンダー色の髪
・爪を袖で磨いて、ゆっくり空中に浮かび上がると、目には見えない長椅子にくつろいで話し掛けてきた。

【感想】
敵の特徴、ルート、アイテムの効果などなど、ゲームブックからの変更点がとても多い章です。それにしても、僧侶も魔術師もいない中、魔法関係はどうなるのかと思っていたら、ここにきていきなりファルタイン登場とは驚き。そういえば、ブラッドソード第五巻では「妖精説得の指輪」が登場しました。活躍する場面は全くありませんでしたが(B5-13参照)。

CM1-5 贈り物の精(The Gift Giver)

【あらすじ】
二人は松明に照らされた部屋に入った。先を急ごうとするアルターに対して、カエレスティスはアルコーブを探ることを主張。アルターが渋々認めると、カエレスティスはアルコーブの中に入り、そして消えた…。彼が入り込んだのは殺風景な地下競技場とは全く異なる、緑あふれる庭園だった。そこにいた贈り物の妖精ラリーシャから3つの魔法の品-ビスレットの剣、ショーミアーノの指輪、アスタランデルの宝石-を受け取った後、彼は再び地下競技場に転送された。ビスレットの剣は、武器をなくしていたアルターが使うことになった。一方、カエレスティスは魔法の指輪をはめてみたが、期待に反して何も起こらなかった。
両側に金縁の鏡が並ぶ赤タイルの廊下を進むと、やがて両開きのブロンズ扉に行き当たったが、カエレスティスは鏡を引きはがして、そこに秘密の通路を発見する。しかし、彼が誤って床に落とした鏡が割れた直後、残りの鏡の向こうから亡者の群れが現れて襲ってきた!

【ゲームブックでの該当場面】
・雇い主がマグス・バラザールの場合のルート:アルコーブ→ラリーシャの庭園→鏡の並ぶ廊下
・盗賊のキャラクターがラリーシャの容姿を褒めて、贈り物を追加してもらう。
・結果的には、盗賊以外のキャラクターが鏡を打ち砕いた場合と同じで、鏡の向こうに秘密の通路を発見するも、亡者が出現。

【ゲームブックと異なる設定】
・やっぱり、バラザールは旅立ちを祝うご馳走を用意してくれなかった(笑)。
盗賊の王子ビスレットの短剣がアスムリーの王子ビスレットの剣に、学者(savant)ショーミアーノの金のかぎタバコ入れが魔術師(wizard)ショーミアーノの金の指輪に、それぞれ変更されている。
・おだてられて気をよくしたラリーシャは、なんと3つとも全部持っていっていいと言ってくれました。
・赤カーペットが赤タイルに変更されている

【ラリーシャの特徴】
・緑色のシルクのトーガ
・ほっそりしているが背は低くない(カエレスティスよりも数センチ高い)
・魂や自由な意思を持たない
・運命の女神の命でここにいる
・でもお世辞は効く

【贈り物】
・ビスレットの剣:アスムリーの王子ビスレットが使っていた魔法の銀の剣。彼はかつて、一日で百人の敵を倒したという。アスムリーはコラード海に面する国で首都はセレンチウム、新セレンチーヌ帝国の南、エンフィドールの東に位置する。
・ショーミアーノの指輪:魔術師ショーミアーノが所有していた金の指輪
・アスタランデルの宝石:ドラゴンロード・アスタランデルの最後のブレスを凍らせた宝石。オレンジ色の宝石の奥深くで、地獄の心髄の轟きを思わせるかすかな光が明滅している。
・旅の安全を祈る祝福の言葉:お世辞を言ったカエレスティスへ、"You may take another gift with those three, the gift of my good wishes in your quest."とのこと。ただの別れ際の挨拶でしょうが、ゲームブックにはない台詞なので。

【アルターvs.カエレスティス】
アルター(A)「(再び姿を現したカエレスティスに向かって)どこへ行っていた?それに、どうやって?」
カエレスティス(C)「それを説明するのはちょっと難しいな。俺自身よく分かっていない場合は特にな。でも、あるエルフに出会ってこれをもらったんだ。その剣はお前が持ってていいぜ。」
A「お前はこれを盗んだのか?」
C「もちろん違うさ。そこは魔法的な空間で、そういう類のことが起こるんだ。そして、それはエルフの乙女が自分の考えでやってくれたことなんだ。」
A「その人は女性のエルフだったんだな?」
C「彼女に会ったのがお前でなくてよかったよ。お前のような修行中の修道士が、彼女のどこを見ればいいか分かっているとは思えないからな!俺は剣をくれたお礼として彼女を賛美し、指輪のお返しにはキスを、そして宝石には心からの感謝で応えたのさ。あれは公平な交換だったと思うぜ。だから俺は何も盗んでいない。」
A「そうか、確かに私は剣を必要としていたからな。」
C「(手を耳に当てて)何だって?よく聞こえなかったぞ。俺が何か正しいことをしたと言ったように聞こえたんだがなあ。」
A「(投げやりに)分かった、分かった、その通りだ。お前は上手くやった。アルコーブを調べたお前が正解で、私は間違っていた。剣についても感謝する。だが、もう先を急がないか?」

【感想】
ここもリプレイに近いので、なんだかデジャブを感じます。ビスレットの短剣改め剣ですが、これが今後アルターの愛剣となります。悪くはないんですが、それならブルートゲトランカーかロジ・スカイランナーを登場させてくれても良かったんじゃ…。

CM1-4 地底界(The Underworld)

【あらすじ】
朝になった。案内係が日の出の一時間前に起こしにやって来たが、修道院の規律が骨の髄まで浸み込んだアルターは、その一時間以上前から起き出し、朝の祈りと瞑想の後に戦闘訓練を実施していた。一方のカエレスティスは、ベッドシーツを掴んで抵抗したため、案内係が彼を床に放り出す始末だった。彼は豪勢な朝食を希望するも、その願いが報われることはなかった。
地下競技場の入口へと向かう途中、二人はライバルとなる闘士達とすれ違う。ヤマトから来た妖術師、神を恐れぬイコンから冷たい視線を感じたアルター。マグス・カルーゲンの開会の挨拶の後、彼らは地底界の暗闇へと下っていった。

【ゲームブックでの該当場面】
・早朝、バラザールの館で起床~地下競技場の入り口に移動。
・マグス・バイルの闘士は三人の黒装束
・マグス・トールの闘士バーバリアンは、The Gnawing Waste(苦痛の荒れ地;クラースの遥か東に位置するツンドラの地。ナイトエルフ、メルカニア人、遊牧民などが居住。トナカイ、クマ、トラなどが生息。)から来た三人兄弟。
・マグス・ウルの闘士イコンはヤマト出身の妖術師(warlock)、既に抜身を手に二刀流の構え。刃にはルーン文字が彫られている。

【ゲームブックと異なる設定】
・マグス・バラザールはプリズムやオパールのメダルをくれなかった。見送りの激励もなし(洗練された無関心さで地下の入り口を指さした後、街へ引き返すようかごの御者に指示)。
・バーバリアンの人数が四人ではなく三人に減っている。
・マグス・カルーゲンの闘士は、昨年優勝者のアルビノの剣士。優勝賞金をばか騒ぎで浪費し尽くし、二度目の挑戦に命を賭ける羽目になっている。疲労でかすんだ目、腫れた赤鼻、やせた腹など、既に敗者のような風貌。
・マグス・カルーゲンが一同の前で開会の挨拶。流れるような黒い斜線で飾られた白ローブをまとった恰幅のよい人物。魔法で拡声された彼の声は平原に響き渡った。

【カエレスティスの想像した朝食】
・チドリのゆで卵3個(その後、満腹で競技に臨むのはまずいと思い直し、2個に訂正)
・辛めに味付けしたインゲン豆
・揚げた野生のマッシュルーム
・香辛料のきいたソーセージ
・ハーブとカブのリソール
*実際は数切れのトーストが供されたのみ

【感想】
この小説のマグス・バラザールは、やはりお高く留まった貴族路線でいくようです。マグス・カルーゲンの闘士が、魔術師ドミナス・ケルでなかったのが意外。カエレスティスの妄想はこの後もちょくちょく出てきて結構笑えます。
こうして猛者どもが一堂に会すると、なんだか映画のワンシーンのようでカッコいいですね。おそらく凄まじい殺気をビシバシ放ちながら、互いを値踏みしているでしょう。

CM1-3 カエレスティス(Caelestis)

【あらすじ】
ペナント小屋に戻ったアルターは、まだ唯一残っていたマグス・バラザールのペナントを手に取ろうとした。その時、衛兵のパトロール隊に追われた先ほどのしゃれ男が走ってきて、ペナントを横取りしようとしたため、二人同時にペナントを手にすることとなった。衛兵隊長はしゃれ男-彼の名はカエレスティス-をスリの罪で逮捕しようとし、挙句の果てにはその場に居合わせただけのアルターまでも連行しようとする。しかし、執事のとりなしで二人ともマグスの闘士候補として採用されたため、逮捕は免れた。
マグス・バラザールの館で二人は、仮面舞踏会のパーティー客の中からバラザールを探し出す試験を受ける。カエレスティスは持ち前の鋭い観察眼で対象を絞り込んでいくと、最後に腹話術でバラザールを出し抜き、見事試験に合格した。

【ゲームブックでの該当場面】
・マグス・バラザールの館での仮面舞踏会

【ゲームブックと異なる設定】
カエレスティスとの出会い(修道騎士+盗賊の凸凹コンビ結成)
・青の塔から帰還した後に残っているペナントが、マグス・カルーゲンではなくバラザールに変更されている。
・バラザールを見つけ出す手法は、ゲームブックでは僧侶の読心術もしくは癖か服装に着目した観察だが、今回は腹話術。
・バラザールが、ゲームブック中のカルーゲン並みに高慢な奴でイメージダウン(笑)。しかも扮装も、ドミノ仮装衣ではなく拷問人に変更され、いやな感じ。
・バラザール発見後に襲撃してくるブルーのマントの男は登場せず。従って、ロジ・スカイランナーの剣もブルートゲトランカーの剣もオシリスのお守りもなし。

【アルターvs.カエレスティス・その1】
衛兵隊長(SE)「おい、この犯罪者め。おとなしくついて来るか?」
カエレスティス(C)「犯罪者だって?俺にはカエレスティスって立派な名があるんだ。俺はマグス…えーっと…、そう、バラザールの闘士だ。」
SE「はっ、お前が闘士だと?お前は闘士なんかじゃない、ただのスリだ。だから俺が逮捕しようとしてるんだ。」
執事(ST)「この若者の発言は正しい。彼はマグス・バラザールのペナントを手にしたのだから、彼を逮捕することはできない。」
アルター(A)「私が最初にここに来たんだ。当然のことながら、闘士になるのは私だ。」
SE「思った通りだ。(部下の衛兵に向かって)この悪党を逮捕しろ。」
C「そんなに慌てなさんな。ペナントは俺のものだ。このウドの大木がどうやって闘士になるんだ?武器さえ持ってないんだぜ。」
A「(太い腕を組みながら)私に武器は必要ない。私の修道会の修道士は、必要であれば素手で戦う訓練を受けている。」
C「本当に?マグス・バラザールが感銘を受けるとは思えんがな。」
A「自分の闘士がスリを働くことを彼が感心するとでも思っているのか?」
SE「もうたくさんだ!法ではどうなんだ?今この者達はマグス・バラザールに雇われているのか?率直に言うと、俺は二人とも逮捕できればそれで満足なんだ。」
A「私は犯罪には関与してないぞ!」
C「俺自身はまだ嫌疑をかけられただけに過ぎないぜ、法廷に出るまではな。」
ST「両者は同時にペナントを手にした。従って、二人ともマグスに仕えることができる。必然的に、彼らは起訴を免れることとなる。」
SE「ちっ、お前には警告しておくぞ。俺は地下闘技場の外で待っている。もしお前がしくじれば、もうマグスの庇護を当てにはできないのだからな。」
ST「もし失敗したら、彼は人間界の法など気にする必要はなくなってるさ。」

【アルターvs.カエレスティス・その2】
C「(噴水の傍の二人の人物を指さして)恐らくあのどちらかがマグスだ。」
A「どうしてあそこにいる緑色のかつらの男ではないんだ?」
C「彼は召使いと話をしている。マグスは決してそんなことはしない。」
A「テーブルの傍に立っている痩せた変人はどうだ?顔を青く塗って灰色のローブをまとっている奴だ。」
C「マグス・ウルの色じゃないか!バラザールが奴を嫌っているのはよく知られているだろ。」
A「それなら、あいつは?」
C「傍を通り過ぎる時に話を漏れ聞いたが、下品な冗談を二人のレディーにしていた。俺が想像するマグス・バラザールの品行の類じゃないね。」
A「どうしてそんなことが分かる?お前は彼のパーティーに出席する習慣でもあるのか?」

【カエレスティスvs.マグス・バラザール】
C「(姿を隠したまま腹話術で)バラザール、私の言うことをよく聞くがいい。私は水の精霊だ。この噴水に私の住処を構えることにした。魚の群れが邪魔ゆえ、こやつらをさっさと追い払うのだ。」
拷問人の扮装の男(T)「何だと?そのように厚かましく話し掛けられる覚えはないぞ。精霊よ、私の噴水から直ちに出ていけ。さもなくば、干ばつと乾燥と汚染の呪文でお前を干からびさせてやるからな!」
C「(姿を現して)バラザール様でございますね。」
T「お前は誰だ?どうやってここに入った?あれはお前の精霊か?」
C「水の精霊はいません。」
A「(姿を現して)バラザール様、我々はあなたの闘士になるためにここにやって来たのです。」
T「何という冗談だ!私はこのささやかな試験で、私の闘士となる機知に富んだ魔術師を見つけ出せると思っていた。だが蓋を開けてみれば、狡猾なごろつきといがぐり頭の修道士ときた!」

【感想】
マグス・バラザールではなくカルーゲンの方がしっくりくるようなシーンです。アルターは剣も失っているので、ゲームブックでカルーゲンとのゲーム(フレイの雄鶏or山の老人)に負けた時と状況が似てますし。

CM1-2 カルーゲンの砦(Kalugen's Keep)

【あらすじ】
カルーゲンの砦の大通りで、アルターは同い年くらいのしゃれ男にぶつかる。しばらくしてから、吟遊詩人の男から託された宝石がなくなっていることに気付く。アルターは砦のどこかに落としたと思い込み、それを見つけるためにマグスの魔法の助けを得ようと、マグスの闘士として競技に参加することを決心する。彼が手に取ったのは、最も近くにあったマグス・バイルのペナントだった。デリクティ運河のほとりにある青の塔へ向かうよう執事に指示されたアルターは、そこでマグス・バイルのバッジを着けた四人の刺客に襲われる。手裏剣を飛ばしてくる奴らをなんとか倒した後、彼はマグス・バイルの真意を探ろうと塔の中に入った。生贄の祭壇の奥の部屋に、奴はいた。不意を突いてマグスに剣を突き刺し、石壁にくぎ付けにするものの、奴は催眠術の呪文でアルターを虜にしようとした。彼を正気に返らせたのは、よろめいた彼の手が触れた血まみれの祭壇布の気色悪い感触だった。こうしてアルターは、マグスが身動きできないうちに、武器を放り出したまま一目散に塔を脱出したのだった。

【ゲームブックでの該当場面】
・第一巻の導入部分から青の塔を脱出するまで
マグス・バイル(Magus Byl)のペナント(黒地に長い翼のある紫色のドラゴンが浮き彫りにされている)を選択
・修道院で時々行われる葬儀での体験から、青の塔の入り口前にあるガーゴイルの水入れから漂ってくる臭いで、水入れの中身が人間の生贄の灰であることに気づく。
・水入れを探ると、黒焦げの骨や融けかけた銀の指輪が見つかった。

【ゲームブックと異なる設定】
・しゃれ男とぶつかる(わざとぶつかられる)
ゲームブックでは盗賊のキャラクターが酔っぱらった商人の金貨袋を盗むが、今回アルターは逆に自分の物(ブラッドソードの宝石)を盗まれている。
・マグスのペナント小屋には執事が一人しかいない。長い鼻と長いあごひげの男。
バイルは、ゲームブックでは「Vyl」だったが、この小説版では「Byl」に変更されている。
・刺客はマグス・バイルのバッジを身に着けている
・最初の一人はペナントの柄で橋から突き落とし、次の二人は生贄の灰を投げつけて目つぶしした隙に剣で倒した。最後に残った刺客は手裏剣で攻撃してきたが、結局アルターに追い詰められて尋問された際、自らアルターの剣へ身を投げ出し自害した。
・最初、アルターは刺客のふりをしてマグス・バイルを騙そうとするがすぐに見破られてしまう。

【しゃれ男の人相・風体】
・腰に剣を帯びている
・アルターのように大柄な筋肉質ではなく、軽業師のような均整のとれた体格。
・旅人が良く着るような素朴な手織りの服ではなく、銀の留め金と白い毛皮の裏張りのブーツ、金色のベルベットの細くぴったりとしたズボン、ファイアーオパールをはめ込んだ銀のブローチで襟元を締めたクリーム色のゆったりとした絹のシャツ、紫と赤の石が散りばめられたベスト、日光に照らされた石炭の様にきらめくフードつきのマントなどを身に着けている。
・黒い長髪を後ろに撫でつけ、一本の白いクジャクの羽根で飾られた粋なハンチング帽の下でポニーテールにしている。

【感想】
嬉しいことに、リプレイと同様、青の塔の探索が選択されています。あのおどろおどろしさは作者も気に入っているのかもしれません。ドラゴンランス戦記に出てくるケンダーのタッスルみたいに、なるべくたくさんの小物を集めようとプレイしたブラッドソード第一巻が懐かしいです。プレイ上何の役にも立たないアイテムでも、各場面の記念になるようなものであれば、後から回想する時に楽しめるので、なるべく色々なアイテムが登場してほしいものです。
また、ヴァイルとバイルは同一人物だった(つまり、ゲームブックのVylはBylの誤植)と言えそうですが、ドラゴンウオーリアーズ第六巻でバンパイアとされているのはマグス・リムであってバイルではないので、まだ謎が全て解けたわけではなさそうです。

CM1-1 柄頭の宝石(The Pommel Stone)

【あらすじ】
クラースの南に広がる広大な森を旅するさ中、若き修道騎士アルターは占い師の老婆に未来を占ってもらっていた。彼女曰く、彼の前途には、仲間との出会い、長く苦しい旅、彼を阻もうとする勢力や支配者、彼を助ける女性などが待ち受けているという。対価として2枚の銀貨を支払った後、森の広場にいた竪琴弾きの吟遊詩人やチェッカーの指し手などにアルターは興味を引かれていく。特に、後者から怪しい雰囲気を感じ取った彼は、奴らが襲撃を企てていることを鋭く見抜いた。機先を制して行動したアルターだったが、ブルームーンの光を浴びた途端、チェッカーの指し手は狼男に変身した!狼男の遠吠えを合図に、奴らの手下の森の民が広場の旅人達に一斉に襲いかかり、辺り一面は修羅場と化した。奴らが去った後、死屍累々の中から瀕死の吟遊詩人を見つけ出したアルターは、彼から謎の赤い宝石とともに、ある使命を託された。それは、クラースの夜空に出現する彗星へと転生した五人の真のマグス達がこの世に再び戻ってくるのを防ぐため、生命の剣を修復するというものだった。突然の重大な使命をアルターが拒否すると、吟遊詩人は彼にカルーゲンの砦へ赴き、ジャイラスなる人物に託すよう伝えて息絶えたのだった。

【主人公】
・名前はアルター(Altor)
エルスランドのオスターリン修道院に所属する修道騎士(warrior-monk)
・同じ宗派に属する僧侶のエメリタス(!)に手紙を届けた帰り道
・簡素な手織りのチュニック
・トウモロコシ色の髪。最初は短く刈り込んでいたものの、数か月の旅の間に伸びてきた。
・くそまじめな表情と正直そうな自由農民の顔とが混ざり合い、相手には脅威的にも喜劇的にも同程度に感じられる。
・年齢は不明だが、若いとたびたび述べられている。

【ゲームブックでの該当場面】
・第二巻冒頭の占いから狼男の襲撃を退けるところまで。
・チェッカーの指し手やそれを見守る森の民の様子に違和感を感じ、チェッカーが単なるゲームではなく、旅の集団を包囲する戦闘計画であったことを看破。

【ゲームブックと異なる設定】
通貨が金貨ではなく銀貨
・占い師の老婆の予言の中に、仲間との出会いが追加された。また、お金を払っても何もくれない(笑)。
・森の民は、単なる旅人ではなく狼男の手下という位置付けに変更されている。そのためか、誰にもシカ肉を分けてもらえなくなった(笑)。
・野営地には、武装した護衛を伴ったカーランド人の交易商人の一団も加わっていた。しかし、狼男の襲撃時にはショックで立ちすくむばかりで、撃退するだけの戦力にはならなかった。
・狼男を通常の武器で傷つけても、通常の半分のダメージとかいうレベルではなく直ぐに回復してしまうので、ほぼ効かない。その結果、アルターは襲撃を事前に察知したものの食い止められず、結局吟遊詩人を始末し終わった二人の狼男は、倒されることなくそのまま撤収。
吟遊詩人から託される物が、ブラッドソードの鞘ではなくて柄頭の宝石に変更された。炎のような赤い輝きを放つその宝石は、彼の竪琴の中に隠されていた。
・吟遊詩人は、生命の剣だけでなく、死の剣の存在も彼に伝えた。一方、生命の剣の残りの部分がどこにあるのかは伝えなかった。
アルターが宝石と使命を拒否すると、吟遊詩人は彼にカルーゲンの砦に行ってジャニラスという人物にそれを託すよう伝えた。

【吟遊詩人とアルターの会話】
吟遊詩人(M)「私は君が自分の運命を占ってもらっているのを見ていた。何か面白いことを言われたかね?」
アルター(A)「占い婆さんは、感動的な未来を予言してくれましたよ。まるで英雄譚のようでした。でも今回は、カードがごちゃまぜになって混乱していたんだと思いますね。」
M「でも君の修道会の修道士達は戦士なのだろう?英雄になる考えは嫌いじゃないだろ?」
A「私は同じ宗派のエメリタス修道士に手紙を届けて、エルスランドのオスターリン修道院に戻るところです。何が起きようとも、神秘的な冒険に巻き込まれて出奔するようなことは私の務めじゃありませんよ。」

【感想】
導入部分は、いきなりゲームブックの第二巻からです。
主人公のアルターは、warrior-monkというゲームブックにはなかったクラスですが、彼には超能力は一切なく(古代伝承知識はほんの少しだけある)、ほとんど騎士(戦士)といって差し支えなさそうです。実際の中世における、騎士修道会に所属している修道士が近い存在かと思われます。ただ、修道士というとどうしても僧侶っぽいキャラクターをイメージしてしまうので、今回は修道騎士と訳してみました。作者が素直に騎士にしてしまわなかった理由は、クラースの南を旅していた背景を持たせつつ、さらに修道士としての信仰心が(最初は拒否したものの)最終的に使命を引き受ける動機となるようにするためではないかと推測しています。
リプレイでは教祖テオドリックを倒してしまったので(B1-29、B4-9)、オスターリン修道院という単語には何だかドキッとしてしまいます(笑)。
ゲームブックと異なり、最初からブラッドソードを絡めてくる辺りは、なかなか面白い試みです。また、吟遊詩人がこの先を暗示するような会話をしてくるのも興味深いところです。まるでアルターを英雄候補としてスカウトしているみたいです。

CM1-0 「マギ戦記」とは

ゲームブック「ブラッドソード」のリプレイは四年前に既に完結したにもかからわず、その溢れんばかりの魅力に憑りつかれ、未だにあちらの世界をうろついている本ブログなわけですが、かつてあのゲームブックのファンだった皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
まだ物足りない、もっとあの世界観に浸りたい、という思いから、デイブ・モーリス氏の作品を探していて見つけたのが、この「マギ戦記」(The Chronicles of The Magi)です。先ごろようやく読み終えたので、その内容をここで紹介していきたいと思います。

このシリーズは、ゲームブック「ブラッドソード」の小説版です。デイブ・モーリス氏自らの著作ですので、まさに正史!と、まあ、そこまでかしこまって崇め奉りながら読んだわけではありませんが、デイブ氏と自分の選択の違いを楽しんだり、新たな設定に驚いたりと、十分に堪能できました。
全三巻から成り、タイトルは「生命の剣」(The Sword of Life)、「夢の王国」(The Kingdom of Dreams)、「星の都」(The City of Stars)です。最初の出版は1997年、出版社はイングランドのHodder Children's Booksです。やっぱり児童書…。読めなくてもどうということはなく、読めても何の自慢にもならないことだけは、ここに明記しておきます(笑)。
一冊のお値段は3.99ポンド(UK)、9.95ドル(オーストラリア)と裏表紙には書かれていますが、こちらが入手したのは古本です。「ST. MARGARETS SCHOOL EXETER」と印字されたシールが貼ってあるので、学校の図書館から古本屋に払い下げられたものかもしれません。やっぱり児童書…。

まずは、裏表紙の紹介文から。
「若き修道騎士アルターは、人生の旅を始めようとしていた。狼男の恐るべき襲撃を受けた彼は、死にゆく男から突然使命を課されてしまった。それは、不思議と魔法に満ちた大地が再び混沌に戻るのを阻むという使命だった。飛び散った魔法の剣を集め、邪悪を打ち破るのだ!」

では早速、第一巻「生命の剣」を始めます。
形式としては、いろいろ思い付く点を箇条書きにしていくつもりです。最初は全文を和訳することも考えたのですが、ゲームブックとは違って改変の余地のない小説をそのまま翻訳するのはさすがに気が引けたので…。

WW6-21 真の友人

ガネロンが剣を引き抜くと、そこには屈み込んだ醜い老婆が姿を現した。
「恐れ入ったよ。」負けを受け入れて、彼女は言った。騎士の剣は彼女の喉に突き付けられたままだ。
「貴様は何者だ?そして、何故アシュリー卿と王国を破滅させようとしたのだ?」
「あたしゃ、ただの孤独な魔女だよ。」悲しげな笑みを浮かべて、彼女は言った。「あたしが欲しかったのはアシュリー卿の愛だけさ。」目に涙をためながら彼女は続けた。「もし王国で一番美しいハヤブサになれば、ハヤブサの騎士はずっとあたしを愛してくれると思った。でも、彼は自分の君主をそれ以上に敬愛していた。彼の心の中で一番になれなかったことが、あたしには耐えられなかった。だから、その代わりに彼の愛した全てを破壊してやることにしたのさ-全ての物を、あらゆる者を!でも、それも失敗した。」
「で、これからどうするつもりだ?」剣の切っ先をさらに近づけながら、彼は尋ねた。
彼女は諦めの溜め息をついた。「この地から飛び去るよ。」
「それにはまず、誓いをしてからだ。」彼は断言した。
「どんな誓いだい?」怪しむように老婆は尋ねた。
「今後二度と、この王国に決して姿を見せないという誓いだ。万が一戻ってくれば、貴様の全ての魔法は永遠に失われるのだ。」
魔女はためらった。
「さあ誓うのだ、さもなくば死あるのみ!」彼が迫ると、ついに老婆はしぶしぶ従った。
魔女が自分の足で立ち上がると、ガネロンは金獅子の剣を鞘に戻した。
「お前さん達は尊敬に値する相手だったよ。」老婆は言った。「お前さん達が王国の境界を越えた時、おそらくあたしと再び相まみえることだろう。でもその時は、今回と違う結果になるからね。あたしゃずっと、そこでお前さん達を待ち続けるよ…。」
彼女はじりじりと後ずさりながら、身の毛のよだつような言葉を残すと、ひどく醜いハゲワシへと姿を変えて飛び去った-今回のところは。

一週間後、騎士と魔法使いはアシュリー卿の自宅の栄えある客人となっていた。曲芸や音楽でもてなされ、食事や飲み物が振る舞われた。祝宴のさ中、アシュリー卿が二人への敬意を讃えて銀の杯を掲げた。口数の少ない彼の簡素な乾杯それ自体が雄弁に語っていた。「真の友よ、ありがとう。」
真の友人。ガネロンは仲間の魔法使いを見て微笑んだ。二人の友情はこれまで多くの試練を耐え抜いてきた。ともに悩み、ともに讃えてきたのだ。二人は互いにお辞儀をして、まだ見ぬ未来について少しの間考えた。騎士と魔法使いにとって、未来とはさらなる冒険や栄光を意味する。だが、他の全てを超えて、真の友人を意味するのだ。友よ、ありがとう。
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補足:これまで、王からの使命が何よりも楽しみだと言ってきた騎士と魔法使いですが、やはり友情はそれにもまさるものなのですね。えぇ話やー。